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「新司法試験」関連記事。
新司法試験合格者2043人、初の前年割れ 法務省の司法試験委員会は10日、法科大学院の修了生を対象にした新司法試験の2009年の合格者を発表した。
4回目となった今回の合格者は2043人で、初めて前年(2065人)を下回った。合格率は27・64%で前年より5・34ポイント低く、初めて3割を切った。特に社会人出身者などの合格率が18・87%と低迷している。
法科大学院の教育の質が問われるとともに、社会経験の豊かな法律家を養成するという司法制度改革の理念が揺らぎかねない事態となっている。

政府は2010年ごろまでに年間の司法試験の合格者数を3000人にする目標を掲げている。同省は合格者数を段階的に増やすため、毎年の想定合格者数も公表しているが、昨年は初めて想定(2100~2500人)を下回り、今年も想定の2500~2900人を大幅に割り込んだ。
合格者数が最も多かった法科大学院は東大(216人)で、中央大(162人)、慶応大(147人)が続いた。全74校のうち、50人以上の合格者を出した11校(計1221人)で全合格者の約6割を占めた。これに対し、合格者が5人以下の法科大学院も24校あった。
今年の受験生は7392人で前年より1131人増。合格者の内訳は、男性が1503人、女性が540人。平均年齢は28・84歳で、最高齢は55歳だった。大学の法学部出身者などの合格率は38・67%だったが、社会人出身者などの合格率は18・87%にとどまった。
◆法科大学院別の合格者数(上位20位、カッコ内は合格率)◆
<1>東京 216(56%)<2>中央 162(43%)<3>慶応 147(46%)<4>京都 145(50%)<5>早稲田 124(33%)<6>明治 96(31%)<7>一橋 83(63%)<8>神戸 73(49%)<9>北海道 63(40%)<10>立命館 60(25%)
<11>大阪 52(34%)<12>九州 46(26%) <13>同志社 45(19%)<14>上智 40(28%)<15>名古屋 40(33%)<16>関西学院 37(19%)<17>関西 35(17%)<18>首都東京 34(39%)<19>東北 30(19%)<20>法政 25(18%)
(2009年9月10日20時22分 読売新聞)--------------------------------------
■この あたらしい制度が、資格試験として破綻していること、法律家養成の公的システムとして致命的矛盾をかかえていることと、20~30代の青年層のキャリア形成としても、ナンセンスというほかない欠陥をかかえたままであることは、
旧ブログ記事から再三かいてきたので、つけくわえる論点が ほとんどみつからない。■しいてあげるとすれば、
当初 受験者レベルで合格率全国1位、出願者ベースでも2位と、ひかりかがやいていた千葉大(
2008年は7位と6位)が、無残なぐらい凋落したことか。
■あえて くりかえす意味があるとすれば、①合格者ヒトけた台の大学院は論外であること、②30名以上といった、そこそこの合格者数をだした有力校も、合格率50%以上が、上位校のうちでも3校(東大・京大・一橋)しかないのは、社会人むけの大学院として破綻していること、③合格率を度外視して合格総数だけでみても、(中京圏の数校を例外として)、首都圏・近畿圏の有力校以外に展望がない寡占化がすすむだろうこと…ぐらいか。■千葉大の凋落ぶりも、ひょっとするとおなじ理由かもしれないが、司法試験対策予備校が至近にあり、「補習」しないかぎり、合格できないのが現実なのだ。その意味では、社会人むけに解放するといった理念が完全破綻しているだけでなく、予備校の受験対策にもたれかからない人材選抜という構想は、雲散霧消しつつあるといえそうだ。
■それにしても、かろうじて「合格点」をつけられるのが、一橋大学だけという惨状は、あまりにひどい。100名前後以上の合格者をだした上位6校(東京・中央・慶応・京都・早稲田・明治)で、「未修者合格率」が5わりに達した大学は1校もないんだから。一橋だって、エラそうなことはいえないんで(未修者合格率56.1%)、法学部卒業者以外は東大にいったって4わり程度しか合格できない法科大学院なんて、ナンセンスというほかなかろう。
■
司法制度改革審議会で、構想をまとめた先生がたは、責任をとる必要があるだろう。■同時に、「市場」をかんがえずに、設置へと暴走してしまった、各大学の法学部の先生がたも猛省するほかない。「法科大学院をつくらないと近隣の法学部に受験生をとられる」という恐怖感から、やむなく「暴走」した経緯を、あまりとがめだてるのも、むごいかという意見もあろう。しかし、受験生に対する責任は、どうだ? ■早晩「市場原理」による「淘汰圧力」から、閉校があいつくだろうが、20~30代の とうとい「青春」「キャリア形成」を犠牲にした「実験」は、あまりに無責任きわまりない。法科大学院関係者は自業自得だが、ささげられた わかものの人生は二度とかえってこない。 ■基本的に いつも関連記事が充実している『毎日新聞』等関連する記事も。
新司法試験:合格率、また最悪 初の2割台、国の目安に届かず 法務省司法試験委員会は10日、法科大学院修了者を対象とした4回目の新司法試験の合格者を発表した。合格者数は2043人(男性1503人、女性540人)で昨年を下回り、委員会が今年の目安とした2500~2900人に届かなかった。合格率は3回連続低下して27・6%と初の2割台になり、過去最悪を更新した。
社会人経験者など法学部以外の学部出身者が多い未修者(3年)コースの合格率は18・9%で、法学部出身者向けの既修者(2年)コースの合格率(38・7%)を大きく下回った。新試験で3回の受験資格を使い切って不合格になった受験者も493人に上った。
今回は法科大学院全74校から過去最多の7392人が受験。合格者の最高年齢は55歳で平均年齢は28・8歳だった。合格者の出身法科大学院別では東京大が216人でトップ。▽中央大162人▽慶応大147人▽京都大145人▽早稲田大124人--が続いた。合格率トップは一橋大(62・9%)だった。
合格者数については、10年に3000人に増員する政府方針に基づき、毎年の目安が示されている。だが、2年連続で届かず、政府方針達成は難しくなった。【石川淳一】
◇法科大学院、総定員見直し加速
新司法試験の合格率が低迷する背景には、全国74校で総定員約5800人まで膨れ上がった法科大学院の乱立がある。過剰な定員が教育の質の低下を招いたとの指摘もあり、過去最悪の合格率を受けて総定員見直しはさらに加速しそうだ。
「合格率7割を維持するなら、定員は3000人くらいに減らすべきだ。ある程度選択と集中が必要」。5年の銀行員経験を経て今回合格した早大法科大学院修了の男性(30)は、発表会場の法務省前でこう語った。受験者の間でも、受験には「リスク感」が漂う。
政府の司法制度改革審議会は法科大学院の創設にあたり、新司法試験の合格率を「7~8割」と例示。法学部以外の卒業生や社会人経験者など多様な法曹像を求めた。だが、今回の未修者合格率は2割弱。社会人からの法科大学院入学者は減少傾向にある。
合格率は上位校と下位校の格差が大きく、50人以上の合格者を出した11校で合格者の6割を占める。今後は学生数の絞り込みと同時に、教育内容の充実も求められそうだ。【石川淳一、伊藤直孝】
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■ことば
◇新司法試験
裁判官、検察官、弁護士の法曹人口拡大を目指して06年から始まった。法科大学院修了者が5年間に3回まで受験できる。合格率が2~3%で受験技術偏重と批判のあった旧試験を改め、合格率を引き上げる狙いがある。
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◇新司法試験の合格者数◇
大学院名 合格者 合格率(%) 未修者合格率(%)
1 東京大 (1) 216 55.5 41.0
2 中央大 (2) 162 43.4 21.1
3 慶応大 (3) 147 46.4 29.3
4 京都大 (5) 145 50.3 30.1
5 早稲田大 (4) 124 32.6 31.3
6 明治大 (6) 96 31.0 21.4
7 一橋大 (7) 83 62.9 56.1
8 神戸大 (8) 73 49.0 35.0
9 北海道大 (19) 63 40.4 27.3
10 立命館大 (9) 60 24.7 20.5
11 大阪大 (14) 52 33.5 25.9
12 九州大 (16) 46 26.4 22.6
13 同志社大 (9) 45 19.1 10.1
14 上智大 (13) 40 27.8 23.0
名古屋大 (21) 40 33.3 28.7
16 関西学院大(12) 37 19.4 12.3
17 関西大 (16) 35 16.9 13.2
18 首都大東京(15) 34 39.1 24.0
19 東北大 (9) 30 19.5 16.9
20 法政大 (21) 25 18.1 16.7
立教大 (25) 25 22.3 20.8
22 大阪市立大(19) 24 25.0 17.0
千葉大 (18) 24 37.5 30.0
24 学習院大 (26) 21 24.4 20.0
広島大 (28) 21 25.0 22.7
26 愛知大 (30) 20 48.8 40.0
日本大 (23) 20 13.1 11.1
横浜国立大(24) 20 25.3 20.7
29 南山大 (33) 18 30.5 24.4
30 甲南大 (36) 17 18.3 15.5
専修大 (26) 17 20.5 10.5
32 成蹊大 (29) 14 20.6 16.7
新潟大 (41) 14 17.3 14.9
34 岡山大 (37) 13 25.0 26.5
35 大宮法科大(30) 12 14.8 14.8
創価大 (35) 12 15.8 12.1
山梨学院大(45) 12 26.1 17.4
38 金沢大 (55) 11 22.4 22.2
39 西南学院大(65) 10 14.9 14.8
40 近畿大 (55) 9 18.0 17.9
明治学院大(30) 9 11.7 10.4
42 青山学院大(33) 8 9.0 7.6
桐蔭横浜大(42) 8 12.9 12.9
44 関東学院大(55) 7 12.5 12.0
福岡大 (40) 7 18.4 14.7
北海学園大(65) 7 29.2 20.0
名城大 (51) 7 18.9 10.0
48 国学院大 (55) 6 10.9 11.1
中京大 (42) 6 15.8 17.1
広島修道大(45) 6 12.8 7.1
51 熊本大 (45) 5 15.6 16.1
久留米大 (51) 5 10.0 10.3
駒沢大 (37) 5 10.4 15.4
東洋大 (55) 5 7.1 3.3
独協大 (42) 5 7.6 7.6
龍谷大 (65) 5 10.4 10.4
57 愛知学院大(72) 4 15.4 12.0
神奈川大 (51) 4 6.7 7.1
静岡大 (65) 4 11.1 6.1
信州大 (72) 4 15.4 15.4
駿河台大 (37) 4 5.0 3.8
東北学院大(45) 4 12.1 10.3
白鴎大 (65) 4 16.7 11.8
琉球大 (63) 4 10.0 10.0
65 香川大 (63) 3 7.1 5.1
神戸学院大(49) 3 10.7 7.7
大東文化大(49) 3 7.0 8.3
筑波大 (51) 3 8.8 8.8
東海大 (55) 3 6.0 6.1
70 大阪学院大(70) 2 5.6 3.3
鹿児島大 (70) 2 5.7 5.7
姫路独協大(72) 2 7.7 5.0
73 京都産業大(55) 1 2.0 2.2
島根大 (55) 1 4.3 4.3
計 2043 27.6 18.9
※カッコ内は昨年の順位
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司法修習生:07年旧司法試験修習生、卒業試験23人不合格
文学・評論 『今日を生きる』=大平光代・著
毎日新聞 2009年9月11日 東京朝刊【関連】遠のく『目標3000人』 司法試験合格3割切る 定員削減の効果薄『東京新聞』2009年9月11日 朝刊
法務省が十日、合格者を発表した二〇〇九年新司法試験は、毎年続落していた合格率が27・6%になり、初めて三割を切る厳しい結果になった。法曹養成を担う法科大学院の関係者の落胆は大きい。合格率の低迷を改善しようと進めている定員削減も「この低い合格率では効果が薄い」と嘆きが漏れてくる。 (佐藤直子、中沢佳子)
「合格者はせめて二千三百人前後は出してほしかった。年三千人に増員する政府計画からどんどん離れていながら、その理由を一度もきちんと議論してこなかった」と早稲田大法科大学院の須網隆夫教授は指摘する。
〇六年から始まった新司法試験の合格率は年々下がり、「法曹の質の低下」への懸念や、弁護士の就職難などの逆風を受け、三千人計画の旗振り役の日弁連さえも「増員抑制」を求める提言をした。
今回の二千四十三人の合格者数について、法務省の林真琴人事課長は「あくまで合格成績に達した人数で、抑制ではない」と説明。「三千人目標は法科大学院での充実した教育が前提だ」と強調する。
一方、新司法試験スタート時に掲げられた「七~八割」に届かない低い合格率に、法曹志願者の「選別」が進む。
合格率の低い法科大学院では定員割れも相次ぐ中、文部科学省は四月、各校に定員削減などの改善を要求。法科大学院協会の三月末時点の調査では、公私立を含む全七十四校のうち六十五校が来年度以降に定員を減らすか検討中。国立大は二割前後削減し、総定員は現在の五千七百六十五人から、少なくとも七百人減る見通しだ。
文科省の担当者は「今後は合格率だけでなく、不合格者数も見て各校に対応を促す」としているが、定員が最多の三百人の中央大は当面、削減しない方針だ。
中央大の福原紀彦法務研究科長は「定員削減はあくまで手段」と一斉削減の流れを危ぶむ。ある私大関係者は「合格者を今よりも増やそうという議論がなくては、法曹志願者の層を薄くする」と危惧(きぐ)している。------------------------------------------
■みんなで 責任転嫁しあっている。「インフレ」による受験者・合格者の水準低下を問題視する関係者がいるが、だったら、アメリカはどうなんだ?■要するに、日本社会は、弁護士の激増をのぞまない「市場」水準にある。そして、財務省が 財政をタテに増員をみとめようとしない裁判官・検察官の ひとで不足が慢性化する構造は、司法試験の制度をイジったって、全然改善しない性格のものってことだ。
■とはいえ、つぎのような責任転嫁は、犯罪的だね。こんなセリフをくちばしった人物がだれか、メディアは実名でさらすべきだ。
レベル不十分、法科大学院に厳しい意見 『産経』2009.9.10 23:09
……法務省は「目安は法科大学院の教育の充実を前提に設定した。そこに達していないということ」とばっさり。
……
文科省の担当者は「制度全体ではなく、あくまで個々の法科大学院の問題。問題を抱えているところは存続も含めて真(しん)摯(し)に考えてほしい」と、特に合格者の少ない大学院に厳しい見方を示す。……--------------------------------------
■「あくまで個々の法科大学院の問題」だって? ここまで卑劣だと、あいたくちがふさがらない。制度づくりを黙認したのは法務省であり、積極的につくったのは文部科学省だろうが? ■それに うかうかのった大学と、そういった国家的詐欺にハメられた、「おろかな」受験生の責任については、「外野」のハラナのような人物が散々批判してきた。しかし、当の当局の担当者が とやかくいえた義理ではなかろう。詐欺行為において、加害者は被害者より絶対的にわるい。「ぬすっと たけだけしい」とは、このことだ。■7~8わり合格。総数目標3000名程度といった計画を 一体 だれがたて、だれが各法科大学院を認可したのか? ちゃんと こたえてみろ!
●旧ブログ
「「ムダ」とはなにか」シリーズ●ブログ内
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テーマ : ロースクール(法科大学院) - ジャンル : 学校・教育
タグ : 法科大学院
以前の試験のほうがよかった
今のやり方は以前の方式よりももっと金持ち優遇になっています。
また大学院という閉鎖空間に社会人経験者も含めて隔離するのは、
世間知らずと偏狭な特権意識をよけいにひどくします。
また宅浪よりも費用もかかります。
それに学校の授業はOJTにはとてもかないません。
携帯一本で最初から独立して仕事を受けるワンコール弁護士、
先輩の事務所に居候さえできない軒先弁護士は、大学院信仰・教育信仰のなれのはてです。
そもそも訴訟社会でない日本で、法曹をいきなり増やす必要があったのかどうか。
もし裁判官・検察・弁護士の数を増やすとしても、
旧試験の合格率を年1~2%ずつ、労働市場の様子を見ながら上げていく調整でもよかったのではないでしょうか。
おっしゃるとおりですね
■法律関係者の労働市場が全然ちがう以上、訴訟社会アメリカをまねることが危険であることは当然として、比較的ラクに弁護士になれる制度、現場主義で実力をたくわえ、そのあとで判事や検察官になれる制度などを全然検討しようとしなかったのも、解せません。■要するに、市場原理にゆだねることもしなければ、すじのとおった養成システムもくめなかった。そして、私学を中心とした、あきらかにムリのある参入者(大学院と大学院生)を大量にうみだした制度のつみぶかさは、ひどすぎます。
■かんがえてみれば、弁護士会や大学関係者のおおくは、エリートとしてそだったボンボンの比率がたかそうだし、以前法律関係者になったときの経験なんてのは、数十年まえで、制度に翻弄される受験生の心理なんてのは、まったく想像もできないぐらい鈍感だったのだとおもいます。■そんなオジさまがたに、制度をイジられたんでは、わかものは、たまったもんじゃありません。人生をなんだとおもっているんでしょうね?
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