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ハラナ・タカマサ

Author:ハラナ・タカマサ
     【原名高正】
誕生日:ニーチェ/フーコーと同日
職業 :サービス労働+情報生産

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政治的左右度:-7.6 
経済的左右度:-5.19
【位置 リベラル左派】

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生活保守主義としての「食の安全」意識とナショナリズム47

■「生活保守主義としての「食の安全」意識とナショナリズム46」の続編。



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世界の環境ホットニュース[GEN] 706号 09年03月24日
……

          毒餃子事件報道を検証する【第45回】        
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 毒餃子事件報道を検証する   原田 和明

第45回 日中メディアの二面報道(2)

 岩谷氏の分析はさらに興味深い問題を提起しています。新華社通信冷凍餃子横流し事件について当初配信予定だった記事を何らかの理由で一部カットして英語版で配信したのではないか? との指摘です。新華社通信の 配信記事を元ネタに報道したとみられる日本側メディアの報道の中に、新華社通信英語版には書かれていない情報があるというのです。
    

 新華社通信の英語版配信記事をもとに、日本側で報道された部分は以下の通りです。【 】内が新華社通信の英語版には記載がない箇所。

《NHK 2009.1.25 放送》
  中国製の冷凍ギョーザに殺虫剤の成分が含まれて
 いた事件で、事件発覚後に河北省のメーカーが回収
 した冷凍ギョーザを地元の20余りの企業が購入して、
 従業員らに配っていたことがわかりました。これは、
 中国国営の新華社通信が24日夜、伝えたものです。
 それによりますと、【去年4月、河北省の国有企業の
 経営者らが会議で集まった際、問題のギョーザを製造
 した天洋食品の社長が、日本でギョーザの中毒事件
 が起きたことで在庫を抱えていると説明したところ、
 多くの経営者が従業員の福利厚生のためとして購入を
 申し出ました。】

  購入したのは、河北省の承徳や唐山にある国有の
 鉄鋼会社など20社余りで、ギョーザは従業員らに無料
 で配られたということです。このうち承徳の鉄鋼会社の
 従業員1人がギョーザを食べたあと気分が悪くなった
 ものの、病院には行かないまま回復し、【新華社は、
 ギョーザが原因だとはいえないとしています。】

《共同通信 2009.1.25》
 中国の新聞社、中国通信社が24日、新華社電として
報じた。

 【天洋食品の底夢路工場長が、昨年4月に開かれた
 同省の国有企業経営者らの会議で「日本のギョーザ
 中毒事件で大きな被害を受けた。ギョーザをすべて
 回収し、在庫問題を抱えている」と発言。出席した
 経営者らが購入を決定したという。】

  同省承徳市の鉄鋼メーカー、承徳鋼鉄では、支給
 されたギョーザを食べた後に1人の社員が気分が悪く
 なった。しかし、病院で診察を受けていないため、【ギョ
 ーザが原因だと特定することはできなかったとしてい
 る。】

《TBS News-I 2009.1.25》
  新華社通信が【ギョーザを購入した鉄鋼会社の社長の
 話として伝えたところによると、去年4月の河北省の会議
 で、天洋食品の社長が回収した冷凍ギョーザの在庫の
 処理に困っていたため、会議に出席した企業の幹部が
 購入を申し出たということです。】


 岩谷氏は「新華社の記事発表の2時間半後にこの共同通信の記事が出て、その3時間後のNHKの報道に 内容の一致があるという事は、事前に中国側から新華社記事の内容の情報が入っていた筈」と指摘しています。下線で示した部分が、当初問題なしとスルーされた(日本側メディアに配信された)後、何らかの理由で英語版ではカットされたと推測されます。

 新華社通信が当初記事(【 】内)をカットした理由とは何でしょう? カットされた部分は、回収された冷凍餃子が地元企業に買い取られることになった経緯(天洋食品の社長からの懇願)と、腹痛の原因が餃子と特定されたわけではないとの見解部分です。

 腹痛の原因については、「餃子が原因とはいえない」程度の表現でも、日本側メディアの反発を招きかねないとの判断ではないかと思われます。「中国側に犯人がいたことにする」とのシナリオにも合致します。

 問題は もうひとつのカット部分(横流しの経緯)です。なぜ カットされたのか? という疑問と同時になぜ当初の配信記事には書かれたのか? という疑問も浮かんできます。その答えになるのではないかと考えられるのが 1月25日付デイリー読売オンライン(英語版)の記事です。この記事は既に検索できなくなっています。(以下岩谷氏の翻訳文から引用)

  日本での食中毒事件の発覚で、天洋食品は日本
 への輸出品が出港する天津港で餃子を回収し、倉庫
 に保管した。天洋食品の底夢路社長は工場にある
 回収された餃子の山の前で記者に対し「何という無駄
 であるか」と不満を表した。

  情報筋によれば、河北省にある天洋食品は経済的
 損失を最低限に抑えるために省内の大企業に頼んだ
 のだろうという事である。

  月曜日の旧正月に本紙記者が訪ねた時、石家荘市
 の天洋食品の工場の正門は閉ざされており、従業員
 の姿は見えなかった。

  工場に近い情報筋によれば、同社は約800人の
 従業員を3月に解雇し、残った30人のシニア従業員
 が公安当局の調査に協力しているという。しかし、
 今年はシニア従業員は例年よりも旧正月の連休
 開始を早めて、最近は工場に出入りする車も少ない
 という。

  工場が生産を中断してから約1年経つが、情報
 筋は「問題が解決していないため工場を閉鎖する
 事も出来ず、シニア従業員達は半分死んでいる
 ようなものだ」と語った。

  情報筋によれば、河北省政府が彼等の給料を
 支払っているのだそうだ。秋以来、中国公安当局
 は約100人体制で、工場従業員の家族3世代に
 対して反日的言動をしていないかどうか取り調べ
 を行っている。数人が拘束され取り調べを受けたが
 彼等は事件への関わりを否定している。当局は
 また、意図的な毒物混入やもっともらしい動機を
 証明する決定的な物証を見付けてはいない。
 (引用終わり)


 このデイリー読売の記事はいつ書かれたものでしょうか? 本文に「月曜日の旧正月に本紙記者が訪ねた時」とあることから、今年の旧正月以降に書かれたはずなのですが、今年の旧正月は1月26日(月)で、この記事の配信日は1月25日と、取材日よりも配信日が先になっています。なぜ読売新聞はそのようなミスを犯したのでしょうか?

 デイリー読売の記事は、1月24日 夜10時の時点で 新華社通信が、回収餃子の「横流し」は天洋食品社長の懇願によるものであることを認めた後の配信であるにも関わらず、「省内の大企業に頼んだのだろう」との推定形になっていることから、記事自体は新華社通信よりも先に書かれていたものと思われます。どうも、読売新聞はこの記事の取材日が新華社通信の記事よりも後だったように偽装しようとしたのではないかと思われます。

 デイリー読売の記事には、元従業員の事情聴取や、河北省政府が会社に残ったシニア従業員の給料を支払っていることなど中国当局からの情報提供がなければ知りえない情報が含まれていることから、中国当局が読売新聞に情報提供した見返りに、新華社側は、読売新聞から本記事を1月24日中に(多分日本語版で)配信すると伝えられていた
とみられます。

 新華社通信の当初記事には、「国有企業経営者らの会議で社長が窮状を訴え、同席した他の経営者たちが購入することを決めた」というエピソードがあり、その後公表された英語版からは消去されているところから判断して、デイリー読売の記事が新華社通信の記事より先に公表されているとの前提で、天洋食品の底夢路社長が(記者に不満をぶつけたように)地元企業に高圧的に回収餃子を買い取らせたとの印象を払拭するために挿入したものと考えられます。

 ところが、1月24日に日本で配信されたのは「横流し餃子で中毒発生」との記事でした。しかも、岩谷氏の分析によれば、中国語版サイトを持っている共同通信が、日本のメディアで唯一このニュースを中国語で発信したものですから、台湾や香港メディアや米国の反共メディアがこのニュースを取り上げる情報源の役割を果たしたという点は大きかったということです。

 日本語版で伝えられた横流しの経緯は、デイリー読売が伝えた「シニア従業員を雇い続けて捜査に協力するため」ではなく、「ずさんな管理」(1.24 読売新聞)、「同社製の中毒事件が大きく報道されておらず」(1.24 毎日新聞夕刊)、「中国当局の発表を信用したため」(1.24 産経新聞)と中国批判のオンパレードでした。それがそのまま台湾や香港メディアによって中国語に翻訳され、ネットで流されたのです。

 中毒発生のニュースを中国語で突然、批判的に流されたものですから、新華社通信は対応に追われ、読売の記事を確認する暇もなかったかもしれません。同日、大急ぎで当初記事を日本側メディアに流した後で、読売新聞が1月25日付デイリー読売の記事内容をまだ配信していないことに気付いたとみられます。慌てて英語版から、横流しの経緯に相当する部分を削除したのではないかと推測されます。

 読売新聞は、デイリー読売の記事を当初1月24日に配信すると新華社には伝え、実際には新華社通信が中毒記事に対する反論を英語版にのみ配信した翌日、読売新聞もまた英語版にのみ上記の記事を掲載したのでしょう。その際、取材日をさりげなく挿入することで、「加筆したため配信が遅れた」とでも釈明ができるようアリバイ工作までしていたと思われます。デイリー読売の掲載日が早すぎて、工作が露呈したのは誤算だったかもしれません。


 毒餃子事件報道から1年の節目にあたる今回の「中国での横流し中毒事件」に関して、日本側マスコミの対応は今回も様々でした。共同通信と読売が中国批判を繰り返し、産経、毎日は先行二紙の後追い記事に終始。朝日と日経はほとんど無関心といった構図でした。なかでも共同通信と読売は日本語版、英語版、中国語版のウェブサイトを駆使して中国との情報戦を繰り広げました。真実を客観的に報道する日本のマスコミとのイメージとはかけ離れた実態の一端を垣間見せたのではないかと思われます。
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■国策メディアにとどまらず、「国益」「社益」を追求しようと、多言語的な情報合戦がくりひろげられる。つごうのわるいと判断された情報は、「適当」に削除されたりする。■したがって、同時並行的に 多言語的に監視しつづけられる ごく一部の例外的市民以外は、タレながされる情報に、ころっと洗脳・扇動されてしまって うたがう能力がない。…

■政府はもちろん、大企業が発信する情報は、商品広告にとどまらず「まゆツバ」で対処するしかない。これこそ、ほぼ普遍的に妥当する行動指針といえそうだ。この鉄則をわすれた情報収集・消費は、再三紹介してきた“ハイパー独裁”田中宇)の とりこになるほかないし、当然自覚などもてない。■例外的な少数者が、いくら正論を発信しても、きくみみをもたないので、修正不能なのである。そして、こういった層が人口の3分の1さえも しめるならば、小選挙区制という投票制度によって、実質的な準ファシズム(意識化されない)が成立するのである。「民主的な討論・投票システムのよる健全な競争原理」といった、幻影によっぱらっているので、過去情報や外部情報との つきあわせが 成立しないし、当然、自分たちのよってたつ立脚点のモニタリングもできない。ましてや、すすむべき方向をナビゲーションするなど、到底不可能な芸当ということになる。



“河北省の毒餃子中毒事件 英語・中国語メディアでの報道”
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タグ : ナショナリズム真理省1984年安全食品ハイパー独裁毒餃子事件報道を検証する

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