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シリーズ2が「かきかけ」のままで、続編をかくのはヘンだが、『404 Blog Not Found』の記事から。
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なにしろ、次元数が違うのである。
本書「ニッポンの大学」は、私が今まで見た中で最も面白かった大学ランキング。その面白さは、「最高学府はバカだらけ」をも凌駕する。
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その面白さの源泉は、圧倒的な次元数。ノーベル賞の受賞者数や偏差値ばかりが大学を推し量る指標ではない。こうした「誰でも思いつく」大学指標も本書は当然カバーしているが、本書ではミスコンテストの受賞者数や、新書の執筆数といった、親が飽きれてしまうような、しかし学生たちにとっては意外と切実なランキングまで扱っている。それがおよそ二ページに一つ。次元数は100程度あるのだ。これはさすがにブロガーでは無理で、プロとして情報を集め、加工し、発信するジャーナリストならではの仕事だ。
それでも、やはりずっぽりと抜けている大事な視点がある。「学び場」としての大学とそれ以外の比較である。ニッポンの大学の「仮想敵」の筆頭は、他の大学。これは事実としても、学び場は今や大学だけではなく、他の学び場のプレゼンスは年を追うごとに上がっている。 もちろん、大学もそれに手をこまねいているわけではない。いわゆる一流大学ほど危機感は強く、その結果として改善度も大きいように見える。特に東大と早慶ががんばっているというのは、「最高学府はバカだらけ」でもよく見えるが、本書のランキングを通すとさらによく見える。もし今の私が学生だったら、この三つを選ぶと思う。20年前の私は、東京の物価の高さとキャンパスのぼろさ、すなわちコストパフォーマンスのあまりの悪さにこれらの大学がはじめから眼中になかったが、その後の各大学の改善と(世界と比較した場合の)東京の物価の落ち着きが、これらの大学を格段に魅力的なものにした。
しかし、もし私が学びたいものが、コンピューター・サイエンスに限らずWebで学べるものであったら、やはりこれらの大学には行かないだろう。ネットを軸に学んだ方が、ずっと良質の学び場体験ができるのだから。今や、「先生はえらい」的なえらい先生は、講義ではなくWebにいる。内田樹に「触れる」なら、神戸女学院よりもblog.tatsuru.comの方がずっとよい。
オンラインでは満足できないとしても、今度は毎週のように勉強会が開かれている。これらの勉強会への「参加資格」もネット経由であることを考えれば、とても「チンタラ」学校に通っている場合だとは思えない。
とはいえ、まだまだ大学でないと学べないことは少なくない。今の大学に何ができて、何ができないかを知っておくためにも本書は役に立つ。たとえその結果が「大学やっぱいいや」であっても。
「大学は、何をするところなのだろう」。この答えを人に聞いているうちは、まだ大学生となる資格がないのかも知れない。たとえそれが「合コンのために行く」という答えにしても、それが自ら出した答えだとしたら、「親や学校に言われて選んだ」学生よりもずっと的確だと私は思う。
しかし、そういう「本来学生として的確」なほとんどの学生達にとって、巷の大学ランキングというのはあまりに低次元であった。ここでいう「低次元」は、比喩ではない。変数が少ないという意味だ。
大学で身につけるべきが技能なのか教養なのか、私は知らないし、知らない以前にどうでもいい。個人的感想だけ言えば、技能(art)も教養(culture)も、とても「娑婆大学」の敵ではないとも感じてはいるが。しかしそれが何であれ、大学が「学びの場」であるというのは譲れない。
あなたは、どこで何を学びますか?
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内田樹に「触れる」なら、神戸女学院よりもblog.tatsuru.comの方がずっとよい」というのは、あまりに暴言だろう。■「
ネット時代にも先生は「えらい」ままでいられるか?」で、筆者自身がおっしゃるとおり、「師匠」はなまみのニンゲンである必要がある。
……自分が持っている知識と知恵をすでに持っている上で、それをたった今得た人の胸中にどういう感動が生ずるかをわかっている人でないとだめなのだ。だから当然知識と知恵があることは前提になる。が、それ以上にその人は、「学び」が人に何をもたらすかを知っていなければならない。
その人を、人は「師匠」と呼ぶ。
……■いや、そういった なまみの「師匠」が大学にいる保証はない。でくわす保証もない。それはたしかだけど(笑)。
■ちなみに、筆者も自覚しているとおり、大学は、知識とか知恵をまなぶという機能だけで判断してもしかたがない。
■それと、数量化困難なのは、どんな同級生・先輩がいるか、どういった校風かといった点だろう。■芸能人やアナウンサーなど有名人がたくさん輩出しているとか、ファッション雑誌の読者モデルがたくさんえらばれているとか、それらが大学の特徴になるばあいもあるが、そういった、「わかりやすい」指標ではかれる大学は、ごくわずかしかない。■それ以外にも、ある高校生・社会人にとって、ぴったりの大学はあるはずなのだ。それをさがすためのヒントとして、膨大な指標(データ)が本書につめこまれていることは事実。
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タグ : 大学教育機関ランキング小林哲夫
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