■前便「
生活保守主義としての「食の安全」意識とナショナリズム41」の続報。
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世界の環境ホットニュース[GEN] 700号 08年11月17日
毒餃子事件報道を検証する【第39回】
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毒餃子事件報道を検証する 原田 和明
第39回 「移り香説」に対する疑問
みかわ市民生協のホームページに日本生協連合会が分析したCOOPカップヌードルの分析値が掲載されています。苦情品ならびに同時購入品あわせて7件、14品を分析し、そのうち、以下の4品について濃度の特定まで行なっています。なお、分析したすべてのサンプルについて検出された物質はパラジクロロベンゼンのみで、濃度の単位はppmです。
商品(賞味期限) 具 容器 ※防虫剤の混入量
とんこつ味(080807) 58.4 1.74 4.38mg
しょうゆ味(080928) 78.6 15.2 5.50mg
しょうゆ味(080928) 67.8 19.6 4.75mg
とんこつ味(080929) 53.6 22.8 4.02mg
(※濃度×内容量で試算。コープヌードルしょうゆ味は
内容量70g、トンコツ味は同 75g)
このようにすべて容器よりも内容物の方が高濃度になっています。もし、「移り香」が原因とするならば、最も高濃度の汚染源から容器、内容物へと次第に濃度が低下していくはずです。生協連合会の分析結果はすべて逆の結果になっていますので、カップめんの内容物に直接パラジクロロベンゼンが添加(または注入)された可能性が高く、「移り香原因説」に対する大きな疑問点になります。
さらに、世の中には様々な防虫剤が市販されており、主な成分はパラジクロロベンゼンの他に、ナフタレンやピレスロイド系のものなどがあります。市場占有率もパラジクロロベンゼン系が圧倒的というわけではありません。「移り香原因説」でいくと、7件の苦情品を分析すれば、それらが雑多に検出されそうなものです。にも関わらず生協で検出された物質がすべてパラジクロロベンゼンだけというのは奇妙な話です。これも「移り香原因説」では説明がつきません。
各2例づつしかありませんので 断定的なことは 言えませんが、内容量の多い「トンコツ味(75g)」で濃度が低く、内容量の少なめの「しょうゆ味(70g)」で濃度が高いように見えるのも 偶然でしょうか? 「移り香」が原因ならば、濃度は内容量に関わらず大気中の防虫剤濃度に依存しそうです。一方、一定量の防虫剤が 各カップに注入されたと考えると、"内容量の多い「トンコツ味」で濃度が低く、内容量の少なめの「しょうゆ味」で濃度が高い" ことの説明がつきます。
しかも、その添加量は前回も述べたように「死ぬことはないが、何がしかの変は起こりうる」という絶妙な量になっていることも毒餃子事件以来の共通項で、それを考えると今回の濃度も偶然とは思えません。
前回のおさらいになりますが、パラジクロロベンゼンの許容一日摂取量(ADI:毎日食べても問題がない量)は体重 1kg あたり 0.0714mg ですから、体重 50 kg の人なら、3.6mg なります。このように、生協の分析値は いずれも ADIを少し上回る程度という、偶然にしては「できすぎた濃度」なのです。
10月28日、佐賀県は「佐賀市内でカップヌードルシーフード(75g)の具から180ppm のパラジクロロベンゼンが検出された。」と発表しました。(10.29 読売新聞)この事例は8月後半に市内のスーパーで男性が5個を購入、3個は9月上旬に食べたが、男性と妻は そのときすでに異臭を感じていたといいます。(10.29 佐賀新聞)さらに もう1個を9月26日に食べようとした際にも、異臭がしたので、現物を日清食品に送付、同社より「パラジクロロベンゼンが検出された」(濃度不明)との連絡を受けていました。神奈川県藤沢市と横須賀市の事件を報道で知った男性が佐賀県に通報、残りの1個を佐賀県で分析したところ、180ppm のパラジクロロベンゼンが 検出されたのでした。佐賀市の事例は、これまでカップめんから検出された防虫剤としてはもっとも高濃度です。
それでも、混入量は、
75g × 180(mg/kg) = 13.5mg
であり、この場合も ADI の4倍程度で、「死ぬことは ないが、何がしかの変調は起こりうる」程度といえます。
佐賀市ではもうひとつの事例が発生していました。会社員の男性(64)が10月20日に神埼市内のディスカウントストアで「カップヌードルカレーMINI」を2個購入。20日昼に会社で1個食べ、残り1個を23日深夜に会社で食べたところ、直後に吐き気や嘔吐、下痢をもよおしたため24日に県に通報した、というものです。(10.29 佐賀新聞)
会社員は購入日に会社で1個を食べて、異常はありませんでした。従って、流通段階での「移り香」の可能性は低いと考えられます。もう1個も会社員は会社に置いたまま、3日後に食べて、「吐き気や嘔吐、下痢をもよおした」というのですが、一般の会社に、短期間でそれほど高濃度になるほどの防虫剤が置かれているとは普通考えられません。
「カレー」は容器の内側から1平方センチ当たり0.0004マイクログラム(ミリグラムの1000分の1)のパラジクロロベンゼンが 検出されて います。(10.29佐賀新聞)そこで、簡易的に「カップヌードルカレーMINI」の防虫剤混入量を試算してみます。
容器の壁1平方センチ当たりのスープ付着量 10マイクログラム
容器の容量を 150ml と仮定すると、スープの濃度は 40ppm となり、
混入量=40(mg/kg)×150(ml=g) = 6mg
となります。これもまた ADI の2倍程度との 試算結果となりました。食べた直後に「吐き気や嘔吐、下痢」の症状がでていますので、実際はもっと高濃度だったと推定されます。
このように、保管時に防虫剤が近くあっても、ほとんど触れていないと考えられる環境でも、いずれも同程度の混入量を示しているのですから、「移り香」では説明しきれない面があると思われます。
なお、生協組合連合会は、パラジクロロベンゼンの毒性について、日本中毒情報センターの中毒情報データベースを引用し、最小中毒量を「体重1kg当り300mg」と紹介し、「安全のために含有量を多めに見積もり、製品に100ppm含まれていたと仮定すると、コープヌードルを150kg(約2000個/1個あたり75g換算)摂取する量に相当します。結論としては、今回コープヌードルから検出された量であれば、パラジクロロベンゼンによる中毒を心配する量ではないと考えられます。」と結論付けています。
しかし、この結論は、実際にカップヌードルなどを食べた人が嘔吐、下痢を発症しているケースが複数発生しているのですから、事実に反することがわかります。環境情報科学センター「化学物質ファクトシート2006年度版(環境省請負事業)」の「パラジクロロベンゼン」の項目によれば、
発がん性については、ラットに体重 1kg 当たり
1日 300mg のパラジクロロベンゼンを2年間、
口から与えた実験では尿細管の細胞にがんが
報告
とある ことから、「体重 1kg 当たり 1日300mg の(大用量の)パラジクロロベンゼンを与え続けた場合、ガンを発症した実験例がある。」と解釈すべきであり、生協のように「体重 1kg 当たり 1日300mg」を「最小中毒量」と表現しては誤解を与えると思われます。
「移り香」事件はカップラーメンに限りません。流通時も保管時も防虫剤と近いところに置かれることはまずありえないと思われるアイスクリームの箱表面からもパラジクロロベンゼンが検出されています。
問題の商品は、東京都練馬区の「コープとうきょう氷川台駅前店」で昨年12月に販売された「CO・OPミニチョコバー生チョコタイプ」です。購入した女性が持ち帰ろうとしたところ、異臭を感じ、帰宅後に届け出たものです。アイスクリームからはパラジクロロベンゼンは検出されませんでしたが、箱からは検出されました。(10.27 産経新聞)「日本生活協同組合連合会は輸送や保管の過程で防虫剤成分が移った可能性があるとみて、近くに防虫剤を置かないよう注意を呼びかけた。」(10.27 毎日新聞)というのですが、アイスクリームが防虫剤に移る状況というのは想像がつきません。
生協組合連合会の10月24日付プレスリリースによると、「2007年12月30日、コープ とうきょう 氷川台駅前店で、前日に該当商品を購入された組合員様から<買い物をして、袋詰めする時にクレゾール臭を感じた。家に帰りその臭いがこの商品の箱から出ているものとわかった>とのお申し出がありました。」とのことです。
2007年12月末というと、福田首相(当時)が中国を訪問しているときで、温家宝首相や胡錦涛国家主席と会談(12月28日)するなど破格の厚遇を受けていたタイミングで、しかも千葉市と兵庫県高砂市で毒餃子事件が発生していた時期とも重なります。2つの事件が表面化しなかったので、東京で新たに事件を起こそうとしたのではと想像は膨らみますが、問題のアイスクリームは「大手菓子メーカーに委託して作った」(10.27 読売新聞)もので、中国で製造していたわけではなさそうですし、毒餃子事件と結びつける証拠は見つかっていません。
「移り香」はアイスクリームに続いて、ミネラルウオーターでも起きています。
(10.29 朝日新聞より引用)。
キリンビバレッジ(本社・東京)は29日、ミネラルウオーターの
「ボルヴィック」から「消毒薬のような異臭がする」
などの苦情が20日から28件寄せられたとして、
問題のある 500ミリリットルのペットボトル57万本
を自主回収することを決めた。
商品を輸入する際に使ったコンテナ内部のペンキの
においが容器のペットボトルに移ったのが異臭の
原因という。容器内部の空気から有機化合物の
キシレンとナフタレンが微量検出されたが、健康への
被害は出ていないという。(引用終わり)
もうこうなると、「またか」と思うだけで、段々驚かなくなってしまいそうです。これも、コンテナ内部のペンキの「移り香」が原因というのですが、疑問があります。ペンキは大雑把にいうと、樹脂や添加剤を有機溶剤に溶かしたものですが、ナフタレンは樹脂になりにくい性質があるので、一般的にはペンキ用の樹脂成分には使用されていないのではないかと思われます。また、「移り香」で説明されているようにナフタレンは揮発しやすい性質がありますので、添加剤としてもペンキには使われないと思われます。この点で、「ボルヴィック」異臭騒動の原因もまた「移り香」だとする説には釈然としないものがあります。それに、毒インゲン事件は10月14日に発生していますので、「異臭の苦情が10月20日から寄せられている」ことも気になりました。私は、ナフタレンがキシレンとともに検出された点に注目します。
ナフタレンは常温では固体で、水への溶解度はほとんどありません。従って、ナフタレンを固体のまま水に入れると、ナフタレンの粉が水に浮いてしまって、混合することができません。しかし、ナフタレンを一旦、キシレンに溶解して、そのキシレンを水に滴下すれば、キシレンの水への溶解度分だけ、ナフタレンを水に加えることができます。Wikipedia では「キシレンは水に不溶」となっていますが、厳密には、常温で水 100g あたり 0.02mg 程度溶解します。そのときのキシレン濃度は 0.2ppm に相当しますので、ナフタレンの10%溶液をミネラルウオーターに滴下すれば、ナフタレン濃度 0.02ppm の ミネラルウオーターを作ることができます。そのミネラルウオーターを1本(500ml)飲んだ場合、
0.02(mg/kg) × 0.5(kg=リットル) = 0.01mg
体重 50kgの人の場合、一日の許容量は 3.6mg ですから、この程度ならボトル1本飲んでも体調不良はないかもしれません。もし、意図的に混入されたのだとしたら、その目的は何でしょうか?
昨年末からの毒餃子事件、毒飲料事件の「殺虫剤」混入事件に続いて、10月には毒インゲン事件が発生、福田内閣が退陣しても毒物混入事件が続いていることがわかったとたんに、7月以降のカップラーメン事件が発覚、さらには10月20日以降の「ボルヴィック」と今度は「防虫剤」混入事件が同時多発的に発生しています。そして、いずれも、「死ぬことはないが、何がしかの変調は起こりうる」という絶妙な混入量であることが何ともいえない不気味さを感じさせます。なんだか、多発する「防虫剤」混入事件は、国民の関心を「防虫剤」にひきつける役割を果たしているのではないかとも思えます。それに対し、日本政府、警察は今回も根拠の乏しい「移り香原因説」を主張するばかりです。-----------------------------------------
■毒物混入を意図したらしい「犯人」たちの真意・政治的背景などの推定については、原田さんの分析も混迷をふかめているようだ。とても、明瞭な像がむすばれたとはいいがたい。■もちろん、
警察をふくめた政府が、なにを かくそうとしているのかも、不明。■しかし、かれらが国民に なにかを かくしたがっていること、それにメディアが あまりにも おとなしく したがっているという図式だけは、明瞭になるばかりである。
■これで、国民のほとんどが疑念をくりださないのだから、
田中宇さんのいう
“ハイパー独裁”の うすきみわるさといったらない。
タグ : ナショナリズム 食品 安全 警察 真理省 1984年 毒餃子事件報道を検証する ハイパー独裁
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