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ハラナ・タカマサ

Author:ハラナ・タカマサ
     【原名高正】
誕生日:ニーチェ/フーコーと同日
職業 :サービス労働+情報生産

日本版ポリティカルコンパス
政治的左右度:-7.6 
経済的左右度:-5.19
【位置 リベラル左派】

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肥満が伝染?

■いっとき話題になったことは、しっていたが、これをとりあげたまとまった文章(半年ほどまえ)を発見したので、転載のうえ、少々コメント。


----------------------------04/22/2008-----
 ボストン読本: <223号>

                           井筒周
-------------------------------------------
     ■肥満という病■

 アメリカ人にはデブが多い、ということはよく知られている。最近の調べによると、過去30年間、アメリカ人のなかで「肥満の人」の割合は増え続けており、国民の3割近くが肥満だという。

 肥満というのには、医学的な定義があって、体重(kg)を身長(m)の二乗で割った数値が、30以上のものを肥満という。例えば、身長が170cmの人だと、体重が86.7kg以上だと肥満になる。

 さて、そこで、アメリカ人が肥満問題に寄せる関心も大きいのであるが、昨年、「肥満は伝染病である」という医学研究論文が、『ニュー・イングランド・メディカル・ジャーナル』という世界的に権威のある医学誌で発表された。同誌のサイトで全文がタダで読める。*  **

 この論文は、肉親・親戚・友人・近所の人・同僚などある社会関係に属する成人(18歳以上)1万2000人以上を32年間にわたって追跡調査したものである。その結論は、ある人が肥満になると、その人の肉親や友人まで肥満になる確率がぐっと増える、つまり、肥満は社会的に広がる、というものだ。

 それによると、あなたの親友が肥満になった場合、あなたが肥満になる確率は171%増加、また、同性の兄弟・姉妹が肥満になった場合、あなたが肥満になる確率は、兄弟間で44%、姉妹間で67%、それぞれ増加するという。しかも、その確率は、それぞれが住んでいる距離には関係がないというのである。つまり、あなたが東京、兄貴が京都に住んでいて、それぞれ毎日違うものを食べていても、肥満が伝染するというのである。

 分かりやすく、表にしてみよう。

● 一方的な友人(自分が親しいと思う人) 
                       57%増
   (内訳)男性同士         100%増
       女性同士           無関係
       異性間            無関係

● 双方向の友人(お互いが親しいと思っている)
                       171%増

● 兄弟姉妹(異性・同性をあわせて) 40%増
  (内訳) 兄弟同士           44%増
        姉妹同士           67%増
        異性の兄弟姉妹       無関係

● 夫婦                   37%増
● 隣人                   無関係


 さて、こういう結果を眺めてみて、いやあ面白いなあ、とは思う。思い当たる点も多い。

 ことに、同じ食事を摂っているはずの夫婦よりも、住む家も食べるものも違う、兄弟や姉妹のほうが影響力があるのは面白い。また、同じ兄弟でも女同士は男よりもうつるというのは分かるなあ、男兄弟ってあんまり姉妹みたいに親しくならないからな、・・・。

 しかし、ここで私がみなさんの注意を喚起したいのは、この研究結果そのものではなくて、この論文に書かれていないことである。記者時代に、先輩が「ほんとうに怖いデスクは、記事を削るだけではなくて、書いてないことを指摘するデスクだよ」と教えてくれた。記事や論文でいちばん大事なことは、じつは書かれていないことだということもあるのだ。

 この論文に書かれていないことというのは、肥満は病気なのかということだ。肥満はいつから「病気」になったのだろう。

 この論文には、「肥満は病気」だとは一言も書かれていない。だが、医学誌が肥満を取り上げたとしたら、「肥満とは医学的な問題だ」、「肥満は病気なのだ」という気分が伝わってくる。

 また、この論文には、何のことわりもなく、「肥満のepidemic」という言葉がよくでてくる。「epidemic」という言葉は、「(好ましくない現象)が蔓延していること」と比喩的に使うこともあるが、第一の意味は「広範囲に広がっている病気」だ。

 しかも、論文の趣旨は、肥満は人間関係によって拡散するということであるが、普通に読めば、「肥満はうつる」「伝染する」んだなと思う。この論文には、「肥満は伝染病」だとは一言も書いていないが、「肥満は伝染病」だというメッセージがはっきりと伝わってくるのだ。

 こうして、「書いていないことが、メッセージとして伝わる」ことになる。こういうのは、書いていないだけに反論のしようもない。だから、書いていないことは、書いてあることよりも、よほど注意をしなければならないのだ。

 「肥満は伝染病」だとしたら、肥満はデブの人だけの問題ではなく、にわかに社会全体の問題になってくる。「デブがうつるから、私に近寄らないでー」、「デブとは友達になりたくない」、「デブは迷惑」、「デブは社会の敵」ということになる。ちょうど、タバコの害が喫煙者だけの問題だったのが、受動喫煙の害が発見されたとたんに社会問題になったのと同じことである。

 肥満が社会的な大問題、公衆衛生の大問題だということになると、肥満を研究している学者や病院・研究所、製薬会社、公衆衛生に関わる役所は、注目を浴びるし予算も増える、本も売れる、薬も売れる、ダイエット産業も儲かる。意識的・無意識的に、肥満を伝染病にしたてあげたい力学というのが存在するのだ。病気とは社会的な概念であるから、肥満は「アメリカの風土病」ということになってゆくのかもしれない。

……

--------------------------------------------
* “The spread of Obesity in a Large Social Network over 32 Years”
Nicholas A. Christakis and James H.Fowler
http://content.nejm.org/cgi/content/full/357/4/370
** “Supplementary Appendix 1
  

■この長期間(1971-2003)にわたる大量な疫学的調査(論文の発表時期は、昨年)は、かなり貴重なデータだとおもう。■そして、人脈という社会ネットワークに着目した、つぎのようなモデル経年変化モデルで、影響力の意義をたしかめようという問題意識も、興味ぶかい。肥満は伝染する?1
Figure 1


肥満は伝染する?2
Figure 2


■カゼで頭痛がするハラナには、詳細をよもうという気力がわいてこない。■ただ、①「類は、ともをよぶ」("homophily")、②気づかれていない同時代的要素(confounding)、③人間関係による相互作用("nodes")を考慮した時系列モデルをくんだというのだから、単なる偶然の「類とも」ではないのだろう。■よくわからんが、たとえば「本人(egoA=男性40歳)は、25歳のとき他者(alterB=女性35歳)とであい、30歳のときから同居し、32歳からBMIが30を突破。並行して、他者(alterB)は25歳でAと同居後、26歳でBMI30を突破。…」といった具体的データの集積なんだろう。

■その意味で、④"mutual friends"(お互いが親しいと思っている)が、劇的に影響をおよぼしあっているらしいこと、■⑤異性間の相互作用はちいさく、夫婦間でも劇的とはいえず、それ以外は無視できそうなこと、■⑥同性の兄弟同士/姉妹同士が、夫婦以上に影響をあたえあっているらしいこと、■⑦「遠くの親戚より近くの他人」というが、階級・階層が近接し隣人という、大抵は親密だろう関係にあっても、食生活ほかの習慣上の影響をあたえあっていないらしいことは、「異性の兄弟姉妹」で肥満が影響しあっていない以上、遺伝子情報でも生活水準でもない、心理的距離が重要らしいこと。ついでにいえば、「隣人」は、「グッド・アメリカン」同士、スマイルの応酬のはずだが、内心は単なるライバルであり、しかも生活態度をコピーしあうような、敬愛できる他者ではない、という現実も、なかなか わらえる。貧困/格差/差別や暴力(銃器・レイプ)問題とならんで、アメリカ社会のかくれた病理と、いえるんじゃないか?***

*** 「一方的な友人(自分が親しいと思う人) 57%増  (内訳)男性同士 100%増 …女性同士  無関係…異性間 無関係」といったデータがどこにあるのか、わからなかった。

■あと、井筒氏の懸念の大半は、よくわかる。■⑧「論文の趣旨は、肥満は人間関係によって拡散するということであるが、普通に読めば、「肥満はうつる」「伝染する」んだなと思う。…「肥満は伝染病」だとは一言も書いていないが、「肥満は伝染病」だというメッセージがはっきりと伝わってくる」という、この論文の政治性。■⑨いいかえれば、「意識的・無意識的に、肥満を伝染病にしたてあげたい力学というのが存在する」こと、■⑩「タバコの害が喫煙者だけの問題だったのが、受動喫煙の害が発見されたとたんに社会問題になったのと同じことで…病気とは社会的な概念であるから、肥満は「アメリカの風土病」ということになってゆくのかもしれない」ということ。■⑪「「デブがうつるから、私に近寄らないでー」、「デブとは友達になりたくない」、「デブは迷惑」、「デブは社会の敵」」といった差別が実際に浮上するだろうことだ。
■これらは、メタボリック症候群騒動や外見差別に政治経済学的背景分析をくわえておいとおり、一応同意できる。「受動喫煙」を過小評価しているとか、社会問題はでっちあげられる、と、いわんばかりの井筒氏の個人的見解、アメリカを「対岸の火事」視しているらしい認識を除外すればね。

■実際、医学界・医薬品業界・健康関連業界、等々の利害にあおられるかたちで、肥満イジメが日本列島でも横行しそうな気配がある。■そして、そういった策動で とばっちりをうけるのは、先天的に肥満体形のひとびと、経済階層上、栄養学的/健康科学な知識やそれを実践する心理的・経済的ゆとりのない層などである。■小学校にメタボリック症候群予備軍の検査をもちこもうといった、「教育的」配慮がうまれつつある現在、かなり ヤバい状況だとおもう。


●旧ブログ記事「転載:「太め」の顔 就職に不利
●旧ブログ記事「容姿差別人事という企業文化
●旧ブログ記事「経済格差の産物としての「体力格差」
●旧ブログ記事「コーン・シンドローム
●旧ブログ内「メタボリック症候群」関連記事
●日記内「メタボリック症候群」関連記事
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