プロフィール

ハラナ・タカマサ

Author:ハラナ・タカマサ
     【原名高正】
誕生日:ニーチェ/フーコーと同日
職業 :サービス労働+情報生産

日本版ポリティカルコンパス
政治的左右度:-7.6 
経済的左右度:-5.19
【位置 リベラル左派】

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「食パン」という、冗語表現

■アーサー・ビナード氏が、『週刊現代』で連載しているコラムの話題は、冗語表現だった。■だが、冗語は、日常言語のなかに、かなりおおくひそんでいる。ほとんどが慣用表現だから、あまりに なれすぎていて、無意味なくりかえしである事実にきづかないことが普通。というか、ほとんどの使用者が きづかないがゆえに、冗語が成立・継承されるとさえいえる。

■その典型例のひとつが、「食パン」。「食米」「食麺」などが、おかしいのとおなじだ。■「飲茶」が、「中国茶を飲みながら点心を食べること」という、ネジれをもった表現であることを、おくとすれば、「茶を飲む(目的語+他動詞)」の語順が、SVO式の言語のばあい、「他動詞+目的語」になっているのは、ごく当然の理。「読書」みたいね。■しかし、「食パン」は、どうかんがえたって「パンを食べる」という意味での「食(べる)+パン」ではない(笑)。

■実は、ウィキペディアには、「食パン」なる珍妙な冗語表現の成立経緯についての仮説が簡明にかいてある。ま、しるひとぞしる、業界ではあたりまえの知識なんだろう。 美術では、食パンを古くからデッサンの道具として用いている。木炭デッサンにおいて、消しゴムは硬くて紙を傷めるために使用できず、柔らかく油分の少ない食パンを代用している。 この時に使うパンを「消しパン」と呼び、食用のパンを「食パン」と呼ぶようになった説がある。現在では俗説とされ、明治初期に外国人の「主食用のパン」であることを示すために定着したというのが一般的であるが、決定的とはいいがたい(「あははっ 語楽 食パンの語源」)。

■ま、ウィキペディア「主食」という項目にも、「欧米においては、主食という概念があまり存在しないが、現在のような食生活は100年程度の歴史しかない。実際には数百年に渡って小麦・ライ麦・大麦などを主要なエネルギー供給源にしてきた歴史がある。欧米においても一般庶民は、長年にわたってパンスープのみで毎日の食事をまかなっていたことが知られている」あるとおり、「主食用のパン」という説以外は「俗説」なのかもしれない。■しかし、ハラナは、「主食用のパン」説こそ、あやしいと にらんでいる。それは、別に、「あまりに つまらない冗語だから、ちがっていてほしい」といった、願望ではない(笑)。

■もっとも多様な語源をあげているとおもわれるのが、「あははっ 語楽 食パンの語源

<1>本食パン説
 パン屋さんで売っている四角くて長いパンのことを、もともと「本食パン」と呼んでいました。第二次世界大戦より前のパン職人は食パンのことを、西洋料理の『もと』となる食べ物という意味で「本食」と呼び、イギリス系の白パン(山型食パン)のことをさしていました。今でも食パンを「本食」と呼ぶ人がいますし、実際に「本食パン」という名前で販売している店も…。その「本食パン」を略して「食パン」と呼ばれるように…。

<2>主食パン説
 日本で「食パン」と呼ばれているものの元祖は、『ヨコハマベーカリー』という店のイギリス風型焼きパンです。『ヨコハマベーカリー』の経営者はロバート・クラークで、1862年に幕府の援助を得て横浜で店を開きました。1874年には木村安兵衛が「あんパン」、1901年には中村屋が「クリームパン」を開発。食パンそのものは早くから日本に来ているのですが、パンとして人々に広まったのは菓子パンの方でした。<下の豆知識を参照> その後、イギリスパンとして広まった山型食パンは、おやつ用とは違う「主食用のパン」という意味で「食パン」と呼ばれるように…。

<3>消しパンと区別する説
 ……もともとパンは明確に「食べるもの」なのであえて「食」をつける意味があったのかどうかという点で、ちょっと強引な説かも…。

<4>酵母説
 食パンは酵母を使って作るもので、ふわっと膨らんですきまができます。それらの穴は酵母が食べた後だとも言えるので、酵母に「食べられた」と言う意味で「食パン」と呼ばれるようになったという説…

<5>フライパンと区別する説
 フライパンも「パン」と呼ぶ(平鍋の形、という意味で、パンケーキのパンはこの意味)ので、キッチンに存在する2つのパンを区別するため、「フライ=パン」「食用の=パン」の区別で「食パン」と呼ぶようになったという説…

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■語源・経緯をしることによって、現在の意味・機能が明確になる保証などなく、むしろ、語源主義的解釈は、有害無益のばあいさえある。「白墨」は死語化したが、「黒板」「下駄箱」などは現役で、その語源知識は、技術の陳腐化という文明批評的意識が介在しないときに、単なるイヤミに堕する。■だが、①16世紀後半に宣教師たちによってもちこまれたあと、全然定着しなかったにもかかわらず、250年以上へてなお「パン」という呼称が継承されたこと、■②「パン」の定着の第一波が、おそらく「阪神間モダニズム」であり(近畿優位傾向)、第二波が学校給食だと推定できること、■③横浜や神戸など外国人居留地の「パン文化」を英国式が席巻したとは到底おもえず、膨大な地域差のうち、なぜ「食パン」が定番となったのかと、呼称の定着経緯とは不可分だろうこと、等々をかんがえると、議論の説得力だけとれば、うえの「本食パン説 」と「主食パン説」が有力だろうが、「第二次世界大戦より前のパン職人は食パンのことを、西洋料理の『もと』となる食べ物という意味で「本食」と呼び、イギリス系の白パン(山型食パン)のことをさしてい…た」という経緯と、「イギリスパンとして広まった山型食パンは、おやつ用とは違う「主食用のパン」という意味で「食パン」と呼ばれるように」なったという起源論双方のたちばは、「どの集団にとって主食という意味なのか断言できるデータがあるのか?」「英国式山型パンが、なぜパン文化全体を代表する、とうけとめられたのか?」という疑念にこたえられない。

■結局、「なぜ『食パン』など、冗語表現がたくさんあるのですか?」といった、高度な質問を留学生からあびせられて、たち往生している日本語教員がたくさんいそうだ。■もともと、第一言語については、言語臨界期までに問答無用ですりこまれてしまうので、健全な批判精神は作動しないのが普通だが(通常は、オトナ世代に抑圧される)、すくなくとも、留学生・就学生、そして移民二世について、むねをはって説明できるよう、用意・対策が必要だとおもう。■つまり、語源知識を権威主義的に言語学者にもとめるようなイデオロギー装置的な姿勢は、徐々に沈静化させるべきだろうが、すくなくとも日本語教育関係者は、語源・経緯問題に自覚的でなければ、現場が混乱するだろう。
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