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ハラナ・タカマサ

Author:ハラナ・タカマサ
     【原名高正】
誕生日:ニーチェ/フーコーと同日
職業 :サービス労働+情報生産

日本版ポリティカルコンパス
政治的左右度:-7.6 
経済的左右度:-5.19
【位置 リベラル左派】

前ブログ: 『タカマサのきまぐれ時評

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風刺の自由と品位(死刑制度とからめて)

■きのうの『朝日』夕刊「素粒子」

 鳩山法相の件で千件超の抗議をいただく、「法相は職務を全うしているだけ」「死神とはふざけすぎ」との内容でした。
   ×   ×
 法相のご苦労や、被害者遺族の思いは十分認識しています。それでも、死刑執行の数の多さをチクリと刺したつもりです。
   ×   ×
 風刺コラムはつくづく難しいと思う。法相らを中傷する意図はまったくありません。表現の方法や技量をもっと磨かねば。



■抗議が殺到した「問題」の「素粒子」(18日)

 永世名人 羽生新名人。勝利目前、極限までの緊張と集中力からか、駒を持つ手が震え出す凄み。またの名、将棋の神様。  
   ×   ×
 永世死刑執行人 鳩山法相。「自信と責任」に胸を張り、2カ月間隔でゴーサイン出して新記録達成。またの名、死に神。
   ×   × 
 永世官製談合人 品川局長。官僚の、税金による、天下りのためのを繰り返して出世栄達。またの名、国民軽侮の疫病神。

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■はてさて。千件をこえる「抗議」と、それに対する朝日のエラいさんの「反省」は、妥当なのか? ■単なる憶測にすぎないが、千件をこえたという抗議者たちのうち、すくなくとも数百件は「被害者遺族」と無関係の人物なのではないか? かれらは、どういった正義感・根拠をもとに、抗議したのか? ■そして、『朝日』のエラいさんの反応は、慇懃無礼〔インギンブレー〕そのもの。とても、「法相のご苦労…は十分認識しています」とか、「法相らを中傷する意図はまったくありません」などといったセリフが ホンネとはおもえない。■おもてむき、「死刑執行の数の多さをチクリと刺したつもり」の動機・意図に問題はなかったが、「風刺コラム」の「表現の方法や技量をもっと磨かねば」、無用な なみかぜ・誤解を生じると不明をはじて、精進するといっているのだろうが、ホントだろうか?

旧ブログ時代からの いくつもの記事でくりかえしたことをうけて、このブログでも「死刑存続論への痛烈な皮肉」という記事でもかいたとおり、死刑制度の最大の問題は、その残虐性とか冤罪の可能性とかではなくて、なんの責任もないはずの刑務官が死刑執行(国家権力による殺人)をしいられるという現行制度である。
■何度かのべたとおり、冤罪を完全に防止できる制度が可能なら、死刑が絶対悪であるとは断定しない*が、刑務官に死刑執行をおしつけて、「死刑は絶対に必要だ」といいはる御仁たちの倫理観をうたがう。■だから、ハラナは、「もし死刑制度をつづけるなら、刑務官におしつけず、死刑を求刑した検察官、死刑判決をくだした裁判長、極刑をのぞむ遺族の代表者、そして死刑執行に同意署名した法務大臣の4者が、死刑執行のボタンを同時におすべき」と、主張してきた。■そして、こういった観点にたつ以上、鳩山法務大臣は、「死刑執行人」でなどない。あわれむべき刑務官に、死刑執行をドンドンおしつけて、法律をまもり正義を具現していると誤解しつづける、おめでたい人物というべきだ。

* ただし、死刑存置派は、「大量殺傷事件によって死刑になれる」という、死刑制度を悪用した、無理心中系の殺人犯を、間欠的にうみだすリスクと、その犠牲者に対する同義的責任をおうことをわすれてはなるまい。

■もともと、法務大臣の死刑制度に対する権限というか、職務は矛盾をはらんでいた。■たとえば、ウィキペディアのつぎのような記述(「法務大臣の権限」)。

死刑執行命令を発する権限と義務
刑事訴訟法によれば、死刑執行の命令は判決が確定してから6か月以内に行わなければならないが、再審請求などの期間はこれに含まれない。また、大臣によって決裁の頻度は異なり、賀屋興宣左藤恵等、在任中に発令の署名をしなかった大臣の例もある。第3次小泉改造内閣の法相杉浦正健が就任直後の会見で「私の心や宗教観や哲学の問題として死刑執行書にはサインしない(杉浦は弁護士出身、真宗大谷派を信仰)」と発言したところ各所から批判を浴び、わずか1時間で撤回するという騒動が起きた(ただし、在任中は死刑執行命令を発しないで、結果的に最初の信念を貫き通した形となった)。判決確定から6ヶ月という規定は、日本国憲法制定後に、「今までのように死刑執行まで時間がかかりすぎるのは、死刑執行を待つ恐怖が長く続くことになって残酷であり、新憲法の趣旨にも反する」という理由で作られたもので[1]、「犯罪者に対する厳正な処罰のために、6ヶ月で執行しなければならない」とする解釈は、本来の趣旨ではない。判決確定から6ヶ月以内に執行されない事例が多く発生し、実効性のない規定になっている。

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■要するに、刑事訴訟法のなかに、署名をさきおくりにする法務大臣を処罰する規定がないため、死刑廃止論者でもない人物が、「自分は署名したくないなぁ」と、ごまかしつづけて任期をおえてしまう例がすくなくなかったということ。■しかしこれは、反戦論者や良心的徴兵忌避者でもない国民が、徴兵を拒否しきれずに、イヤだなぁと、不承不承応召されて、たまたま殺人にてをそめないですんでいるのとは、ちがう。■なぜなら、法務大臣は、ハラナの提言のように、署名したあと、死刑執行にたちあうこことさえないからだ。そんな絶対的な刑場との物理的・心理的距離があるにもかかわらず、歴代の法務大臣の何人かは、署名をしなかった。うえの3名は、あきらかに政治信条として、死刑をさけたようだが。


■もともと死刑制度は、あまりに残虐な犯行に対して、社会秩序を維持するためには極刑が必要であるとか、凶悪犯罪に対する抑止力がある程度みこめそうだ、といった理由で存続してきた。つまり、あくまで、社会秩序の維持が目的であって、遺族の復讐心とか大衆のサディズムをみたすために極刑がのこされているわけではない。■しかし、死刑存置派のおおくは、「死刑制度に反対する連中に批判をくわえるのは、正義である」と、自分たちの立論の無謬性を信じてやまないようだ。そして、その くちぶりには、被害者と無縁な第三者にしては、あまりに 熱情がこもっており、しばしば 死刑囚や被疑者にくわえられる 暴力的な口吻をみるかぎり、サディスティックな欲望がかぎとれて しかたがない。
■ともかく、うえのように、実に複雑な背景があるにもかかわらず、というか、そういった背景をハナからまなぶ気がないがゆえに、無知なまま死刑存置論を正当化できているようだ。■膨大なデータが集積している労作サイト『死刑廃止と死刑存置の考察』の管理人さんでさえも、ハラナをなっとくさせるような論拠をだしてくれていないのだから、なにもかんがえていない、なにも勉強しているとはおもわれない死刑存置派に、そんな高級で説得力のある論拠があるとは、到底おもえない。

■このようにかんがえきたとき、鳩山法務大臣の知性の程度はもちろんのこと、それを、気のきいた短評でもって風刺できたとかんがえたらしい 『朝日』のエラいさんたちの知性にも、おおいに疑問がわく。■批判するなら、鳩山氏のような あまりに かるがるしい人物が署名できてしまう、死刑制度のおそろしさこそ批判すべきだし、かるはずみな大臣の資質の犠牲になる 死刑囚と刑務官の人権こそ、とうべきであって、皮肉なんぞで 悦にいっているばあいなどではあるまい。■ひとの いのちを、なんとこころえているのだろうか?
■そして、だからこそ、「法相は職務を全うしているだけ」「死神とはふざけすぎ」といった水準でくくられてしまう程度の抗議ばかりが、千件をこえたというなら、死刑存置派らしい『朝日』の読者の知性・品性も、きわめて低劣だとおもう。■「素粒子」は、もともと少々下品なコーナーである。いや、パロディやコメディなど、風刺という制度自身が、少々下品でなければならない。たとえば川柳や狂歌が、高尚をきどって、どうするというのだ? 権力者や世情を痛烈に皮肉るときに、必要以上の高尚ぶった姿勢は、効果激減どころか本旨に反する。
■しかし、だからこそである。刑務官と死刑囚という、「ころす/ころされる」という最前線のいる、なまみの人間の尊厳に対して、最低限の敬意をはらう責務があった。今回の「素粒子」の下品さは、鳩山法務大臣を かるはずみに皮肉った、その いきすぎにあるのではない。■刑務官と死刑囚という、自分たちが縁もゆかりもない第三者のあたまごしに、死刑制度の本質をとわないような ざれごとを 公器にながしたという点こそ、下品きわまりない本質なのだ。■そして、それを とらえそこなって、「正義」を実践したつもりになっている、おそらく死刑囚や刑務官や遺族などとは無関係な数百名にものぼるだろう非難のこえのぬしたちの品位こそ、とわれねばならない。
■その意味では、「技量」不足以外に反省したふしがない、そして、そういった ひとをくった文章を よまされて、はぐらかされたとしかおもないだろう『朝日』の読者こそ、大問題だろう。■これは、今回の愚劣な応酬ではおさまらない次元での失言であり、はっきりいって「謝罪広告」級の失態なのだ。そして、おそらく そういった次元で、この愚劣な応酬が 再検討されることは、まずないだろう。■そして、この次元に大衆とメディアがあるかぎり、死刑制度論議は、絶対にふかまらない。


【旧ブログ主要関連記事】
●「たまっていく死刑囚?

●「「終身刑」再考
●「国家は なぜ死刑囚に自殺をゆるさないか
●「裁判官の守秘義務って、なにをまもっているの
●「更正も沈静ももたらさない司法
●「サディズムの発露としての死刑存続論
●「死刑制度について(その5)
●「とじこめる/みはる/ころす
●「オンフレ『〈反〉哲学教科書』
●「郷田マモラ「モリのアサガオ」(読書ノート補遺1)
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タグ : 死刑 刑務官 殺人 国家 鳩山邦夫 法務大臣

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