■『中日』経由の「共同通信」の記事。
児童虐待が4万件突破
8年で4倍、厚労省集計
2008年6月17日 13時28分
2007年度に全国の児童相談所が対応した児童虐待は、過去最多だった06年度より3295件多い4万618件だったことが17日、厚生労働省の集計(速報値)で分かった。対応件数は、集計を始めた1990年度(1101件)から毎年増加しており、99年度に1万件を突破して以降、わずか8年間で4万件を超えた。
厚労省は同日、全国児童福祉主管課長・児童相談所長会議に報告。「被害事例が増えているだけでなく、虐待に対する住民の認識が高まっていることなどが影響している」(虐待防止対策室)と分析している。
集計対象は、児童相談所に寄せられた通報や相談のうち、虐待と判断され、一時保護などの対応に乗り出したもの。47都道府県と児童相談所を独自に設置している19市の計66自治体で、別々にまとめた。
29都道府県と13市で前年度より対応件数が増加。増加の割合が最も大きかったのは山形県(74%増)で、鹿児島県(67%増)と札幌市(54%増)が続いた。
(共同)------------------------------------------
■これは、冷静な読者なら、異様な推移だとすぐきづくはずだ。普通はありえない。■エミール・デュルケームが『自殺論』としてまとめた背景は、「
当時のヨーロッパ各国での自殺率が短期間ではほぼ一定値を示した統計資料などから、各社会は一定の社会自殺率を持っている」という、巨視的知見だった。自殺は、たとえば1990年代中盤からの日本での自殺者数の急増のような異常事態を例外として、かなりの程度、一定の発生率をたもつ。■おなじように、児童虐待が年々増加するとか、自治体によっては、1.5倍増以上の異様な増加率をみせるといった統計は、異様すぎる。
セクハラ事件の発生件数が激増しているからといって、以前よりセクハラの実数がふえつづけているのはないのと、構図はおなじで、
暗数が合理的に推計されなければ、意味がない。■その意味では、「
「被害事例が増えているだけでなく、虐待に対する住民の認識が高まっていることなどが影響している」(虐待防止対策室)」といった見解は、きわめて不充分にみえる。 ■ウィキペディア「児童虐待」から、「
児童虐待の「発見」」を転載。
児童虐待が社会問題として浮上したのは比較的近年である[6]。特に近代以前においては、児童は親の所有物という考えが社会通念としてあったために、人身売買や、果ては口減らし(間引き)とする子殺しすら行われていた。平成7年の刑法改正により削除になるまで尊属殺で子が親を殺すのは厳罰であったのに、親が子を殺すのに対しては格別罰則を設けていなかったり、推定103人を虐待死させた寿産院事件では、主犯に下された判決は懲役4年であった。
また、民法においても、親権者による「必要な範囲内」での体罰は認められているため、現実に虐待と体罰の区別を明確にすることは難しいとされている。
旧刑法第200条(平成7年刑法改正により削除)
自己又ハ配偶者ノ直系尊属ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス
民法第822条
親権を行う者は、必要な範囲内で自らその子を懲戒し、又は家庭裁判所の許可を得て、これを懲戒場に入れることができる。 ------------------------------------------------
■要するに、セクハラ同様、以前は「社会問題」と認識されていなかったので、現象・事実が、あたかも「ない」ことのように あつかわれてきた、ということ。■学校教育で「体罰」が法的に否定されても、クラブ活動等で、しぶとくいきのびているように、「懲戒」権が年長者に保障されているかぎり、「おしおき」「教育的指導」は なくなりそうにない。■そして、そういった権力関係がのこる以上、
社会学的密室では、虐待がくりかえされるから、権利意識の定着にムラがあるなか、徐々に、ときに、うえのデータのように異様な「急増」が報告されたりという茶番劇がつづくだろう。
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