■いくら、欧米のオリエンタリスティックな視線が軽侮をともなっていて侮辱的に感じられようと、いくら欧米の批判が「自分のところは、どうなんだよ」状態の偽善そのものであろうと、まぎれもない歴史的国際問題を、「内政干渉するな」と連呼する中国政府と、それにあおられて「愛国者」としてよっぱらっている中国大衆は、こまりものだ。■不買運動はいいんだが、そういった運動をわざわざいいたてなければいけない現実自体日本人のマネで、「おフランス、大すき」なんでしょ?
■『朝日』の記事から。
中国でフランス製品不買運動
聖火リレー妨害に反発
2008年04月16日01時00分
【北京=峯村健司】パリで北京五輪の聖火リレーが妨害されたことなどを受け、中国で仏製品の不買運動が起きている。「05年の反日デモの再来」(中国筋)と言われるほど民族主義が高揚しており、当局は各大学にデモや集会を警戒する通達を出したり大使館の警備を強化したりするなど対策に乗り出した。

カルフール不買を呼びかける携帯メール
中国内で112店を展開する仏大手スーパー「カルフール」での不買を呼びかけるチェーンメールが携帯電話で出回っている。「カルフールの大株主はダライ(・ラマ14世)勢力に巨額資金を提供し、大統領も北京五輪に反対している。開催3カ月前の5月8日から不買をしよう」
大手ポータルサイトでも、ルイ・ヴィトンなど高級ブランドへの批判や「仏製から国産品に切り替えよう」との呼びかけが書き込まれている。
北京市内のカルフール前では13日、20代の女性が「中国の主権を侵害するフランス製品をボイコットしよう」と呼びかけ、駆けつけた警官に説得されて引き揚げた。中国外務省の姜瑜副報道局長は15日の定例会見で「フランスは中国人民の声に耳を傾けるべきだ」とする一方、「市民が法律に基づき合理的な方法で意見を表明すると信じている」と自制を呼びかけた。
サルコジ大統領が昨年11月訪中した際に3兆円規模の商談をまとめ、両国は「過去最高の関係」(中国外務省)とされた。しかし、サルコジ氏が北京五輪開会式への出席の条件として「中国とダライ・ラマ14世との対話再開」を挙げた今月8日ごろから、中国メディアがフランス批判を強めている。
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■フランスというくにが、むかしから中国ずきで、たとえば
ベトナムの植民地化だって、その延長線上だったってことは、
オリエンタリズムの典型例として位置づけ可能だ。■フランス人男性たちにとって、中国大陸から
インドシナ半島にかけての空間、そしてそこにくらす
チャイナドレスや
アオザイの女性たちが、「オリエンタル」なイメージとして魅惑的だったという性的比喩は、かなり意味深なわけだ。■「西欧文明の歴史的蓄積と先端部分を双方おしえてやろう。そのかわり…」という、「交換条件」を、フランスのオトコたちは、ずっとアジアにつきつけてきた。文明論的な、
ファロセントリズム…。
■ま、そういった過去の経緯はともかくとして、つぎの記事なんかは、あまりとりざたされていないが、ことの本質をかなりあらわしているような気がする。
■おつぎも、『朝日』の記事。
ダライ・ラマ、中国政府と非公式接触
チベット騒乱後も
2008年04月15日20時01分
【ワシントン=鵜飼啓】訪米中のチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世の同行筋は14日、チベット騒乱後も中国政府と非公式な「接触」を持っていることを明らかにした。米政府などは中国にダライ・ラマとの対話再開を求めているが、同行筋は「(接触は)対話と言えるものではない」としている。
中国の胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席はダライ・ラマとの対話について「門は開いている」としつつ、「接触や話し合いを続ける」条件として「祖国分裂活動の停止、暴力活動の首謀・扇動の停止、北京五輪の破壊活動の停止」を挙げている。
一方、国務省のケーシー副報道官は14日の会見で、チベット問題特別調整官を務めるドブリアンスキー国務次官が21日にミシガン州でダライ・ラマと会談することを明らかにした。チベットの現状や中国との対話についての考え方などについて意見交換する見通しだ。 ----------------------------------------------
■ダライ・ラマ14世ら、亡命政権がわからすれば、「
「接触や話し合いを続ける」条件として「祖国分裂活動の停止、暴力活動の首謀・扇動の停止、北京五輪の破壊活動の停止」を挙げている」中国政府がわの態度自体が、自己矛盾というか、ふざけた論理としかうつらないだろう。「そういった条件をえらそうにつけるなよ。まず最初におこなうべきは、信教自由をふくめた実質的自治の実現と、漢民族の大量流入の停止、経済的搾取の停止、過去の経緯への賠償だ」ってね。■つまり、「
門は開いている」なんてのは、アリバイ的ないいわけ、抑圧・弾圧体質のカムフラージュにすぎないわけで、ハナから「恭順の意をしめさないかぎり、完全制圧だ」という、強圧的姿勢だけが一貫していると。そういうのは「対話」っていわない。おどし、っていうわけだ。そんなことやっているから、自称「民主化」勢力のアメリカ人や、日本の右派に、「覇権主義」とかいわれると。■戦争犯罪の末端での実行犯であった、日本の将兵たちを、思想教育したときの、「太陽政策」的態度は、漢民族の「大人」ぶりを象徴していると、帰国者たちからくりかえしかたられてきたが、中国共産党もどんどん覇権主義者・帝国主義者になりさがったようだ。■年配の帰国者たちは、かなしんでいるとおもうぞ。
■中国が、名実ともに大国として復活したいのなら、軍事・経済・学術・スポーツだけでめだつのではなく、精神的ユトリ、寛容のココロこそ、ともなわねばなるまい。ナショナリストの諸君に、そうつたえたい。■ネット上などで、さわげばさわぐほど、世界中の差別主義者たちのえじきだと…。
●「
ダライ・ラマ代理人が中国側と非公式対話(日刊スポーツ)」
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差別主義者に情報を提供することになるかもしれないが
予断ですが、オリエンタリズムとジェンダーがつよくむすびついているとは認識していたつもりですが、ファロセントリズムという言葉は知りませんでしたので勉強になりました。関連したネタをあげるなら、『ボクと妹』(ジェーシー出版)という漫画において、身体が男性化した(といっても外性器だけだが)女性が、精神的にも下卑た「オヤジ」(という用法も中高年男性に対して差別的?)になってしまう、という設定は作者しのざき嶺氏独特のセンスが光っている設定だと思います。「オレの女にしてやる」(97ページ)というセリフも、その意味ではすばらしいセンスだと思います。
さすが、「おらザク」にザク一個小隊を送りつけるという、ケロロ軍曹なみの荒行(?)を敢行しただけのことはあります。
(趣味に走りすぎてゴメン。いつものことだという気もするが、今回はいつも以上かも)
「前向きな兆しない」/対中接触でダライ・ラマ(四国新聞)
2008/04/19 10:46
【ニューヨーク18日共同】講演などのために米ミシガン州を訪れているチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は18日、同州アナーバーで、中国政府に対し「内密なチャンネル」を通じて書簡を送ったが「前向きな兆しはない」と明らかにした。チベット自治を支援するカナダの「チベットの友人議員団」との会見の際、報道陣に述べた。
AP通信によると、ダライ・ラマは北京五輪の聖火リレーをめぐる欧米での混乱の後、書簡を送ったと述べたが、詳細には触れなかった。ダライ・ラマは13日、西部シアトルでの記者会見で、中国側との接触について「非公式なチャンネル」を通じた取り組みで、自身が直接行っているわけではないと話していた。
一方、議員団の1人、与党保守党のロブ・アンダース議員は「ダライ・ラマは自治の拡大を求めているだけ。中国政府は脅威と考えるのではなく、解決(の窓口)の一つとして見るべきだ」と、対話を促した。
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■平和主義者であり かつ現実主義者のダライ・ラマ14世は、暴力主義による分離独立運動を否定しているだけでなく、自分が元気なうちに、対話が劇的に進展することなどないだろうことも、よくわかっているのでないか? ■だから、中国当局が全然本気で「対話」なんぞする意思がないことを世界中に印象づけて、中期的に後世のチベットのリーダーたちに有利な世論づくりに専念しているのではないか?
■ま、欧米と日本のリーダーたちは所詮覇権主義者なので、チベット情勢にからんでくる層のほとんどが、政治利用しかたくらんでいないことも、重々承知のうえで利用し利用されているダライ・ラマは、実に気の毒。
まあ、アリバイ的にくりかえされる交渉か…
http://www.47news.jp/CN/200810/CN2008103101000502.html
【北京31日共同】チベット亡命政府を事実上率いるチベット仏教最高指導者、ダライ・ラマ14世の特使と中国当局による今年3回目の対話が31日、北京で始まったもようだ。
これまでの対話でチベット自治区の「高度な自治」を求めるダライ・ラマ側と、拒否する中国側とは原則論でまったくかみ合わず、今回の対話でも歩み寄る可能性はほとんどない。特使は30日に北京に到着、約5日間滞在する。
かつて独立要求を掲げたこともあるダライ・ラマは1980年代後半、自治権拡大の穏健路線に転換。2002年から昨年まで6回実施した対話でもダライ・ラマ側は同様に主張したが、要求は事実上の独立につながると受け止める中国側が取り合わなかった。
今年3月のチベット暴動以降に再開した対話では、暴動をめぐり「中国政府による抑圧への住民の不満の表れ」とするダライ・ラマ側と「ダライ勢力の画策」とする中国側が真っ向から対立。
2008/10/31 19:06 【共同通信】
中国の大衆ネタ
バブル経済期の日本などと同質では?
■とはいえ、チベット・ウィグル問題等、漢民族の大半は覇権主義の自覚がなく、国威の拡大が無前提の善だと信じているようですから、それについては警戒すべきですね。■しかし、それは中長期的な視野にたって、それこそ「箱の中」(http://harana.blog21.fc2.com/?q=%C8%A2%A4%CE%C3%E6)にこもることなく、気ながな対話・交渉・説得をくりかえすしかないでしょう。■無論、超大国アメリカのように、対話・交渉・説得をくりかえす必要のない、ごく一部の覚醒部分が全然政治力をもたず、暴走するばかりの、ノンストップ帝国もあり、中国が近未来にそうならないという保証など、どこにもありません。しかし、そうであればなおさら、そういった事態を直視・予期した態度をとれるよう準備しないと。■ネット右翼みたいに、ひたすら危機をあおるとか、逆にはじけてしまって、「中華帝国は必然的に崩壊する」論といった妄想系の議論にまどろんでいても、なにも生産的でありません。ただ非現実的で危険と。
■かの空軍司令官も、そういった危険人物のひとりであり、そういった人物を昇格させてはじない国軍の体質、シビリアンコントロールの空洞化も大問題ですが。
定性的には賛成しますが定量的にはもしかしたら
『サンデー毎日』7.6号42ページの「インサイド中国」によれば「高度経済成長期というより、戦前の日本に似ている」との評価がありましたので。問題の質は多分タカマサさんのおっしゃるとおりでも、その量は戦後の日本ではなく戦前の日本に匹敵するのかもしれないという懸念がいまいち払拭しきれないです。もちろん、その様な定量化は反中右派につけこまれない様に慎重におこなわねばならないことではありましょうが。
なにぶん、人口も領土もでかいから…(笑)
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