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ハラナ・タカマサ

Author:ハラナ・タカマサ
     【原名高正】
誕生日:ニーチェ/フーコーと同日
職業 :サービス労働+情報生産

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政治的左右度:-7.6 
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【位置 リベラル左派】

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“迷惑メール事業者”はこの先どこへ行く?(鈴木良介)

■日経ビジネスオンラインの記事「“迷惑メール事業者”はこの先どこへ行く?」(鈴木良介)の分析は、かなりの程度、社会学的。■一部転載。


“迷惑メール事業者”はこの先どこへ行く?
違法人材リソースはどこへ転じていくのか
2008年4月9日 水曜日 鈴木 良介
keyword IT・通信  マーケティング  迷惑メール  法規制 

 迷惑メールのあまりの多さにふと忘れてしまいがちであるが、日本のどこかには迷惑メールを送ることによって生計を立てている人がいる。「今日も仕事をするか」と言って迷惑メールを送っている人が必ずどこかにいるのである。

 もちろん、送信者だけではなく、迷惑メールの送信先としてのメールアドレスを収集・販売している人もいれば、安全に(足がつかないように)迷惑メールを送信できるようにセキュリティが甘いPCを乗っ取っている人もいるだろう。「主人が冷たくて寂しい思いをしている人妻」を演じてメールの文面を考えている人など、関連業務に従事している人も多くいるだろう。個人事業かもしれないし、組織的に厳格な役割分担のもと、作業をしているかもしれない。

 2007年半ばより、総務省および経済産業省が迷惑メールに関する法規制の強化に向け検討を進めている。連日の法制度強化の報道を見るにつけ、彼らは少なからず動揺をしていることだろう。

 これまでの低額罰金ならいざ知らず、改正後の高額な罰金や懲役刑のことを考えたとき、リスクとプロフィットが見合わなくなってしまう。彼らにしてみれば、まさに「経営環境の変化に伴うビジネスモデルの崩壊」である。40歳半ばの迷惑メール送信者は苦悩するだろう。やっと慣れてきたこの商売を続けることができなくなってしまうのか。子どもはまだ小さい、老親の面倒も見る必要があるのに…。

 さりとて、嘆いてばかりはいられない。明日の糧を得るために、なにかをして働く必要がある。今までの技術と資産と経験を活かせる仕事はなんだろうか?これまで携わってきた迷惑メール事業をどのように転換していくべきだろうか?

 ここで彼らが合理的な考えに基づいて帰結する「次の事業」こそが、消費者・事業者・行政が考慮するべき「次の脅威」となる。

 直接確認をしたわけではないが、迷惑メール送信事業を実施すること自体に意義を見出している迷惑メール事業者はほとんどいないだろう。車を盗むよりも、オレオレ詐欺をするよりも、コストパフォーマンス(あるいは「リスクパフォーマンス」ともいえるかもしれない)が高いと考えたからこそ迷惑メールを送信しているはず
なのだ。

 このように、経済合理性に基づき行動するIT系犯罪者が次の一手としてどのような策を検討しているのか考えることが本稿の目的である。迷惑メール業界における人材リソースシフトがどのように行われるかを検討することは、次に重要問題となるセキュリティ上のテーマを考える上で有用であるはずだ。

……

法規制強化の動向

 迷惑メール問題に関する主たる法律は2つある。1つは総務省主導による「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」(特電法)であり、もう1つが経済産業省主導による「特定商取引に関する法律」(特商法)である。

 特電法は主に迷惑メール送信事業者を対象としたものであり、特商法は迷惑メールの広告主を対象とした法律である。前者は2002年に新たに制定されたものだ。後者はそれ以前より存在していたものであるが、同年に迷惑メールに対応するよう法改正がなされたものである。
……
 総務省「迷惑メールへの対応の在り方に関する研究会」における中間報告および国会に提出された特電法改正案では、規制の実効性を高めるための改正するべき項目が示されている。具体的には、オプトアウトからオプトインへの転換、金融機関・プロバイダー等に対する報告徴収、加えて罰則の強化、国際的な連携の強化などが検討の方向性として挙げられている。

 オプトインへの転換とは、あらかじめ電子メールの受信に同意した人以外に対して広告・宣伝メールを送ることをできなくすることである。現行法のもとでは、一定の条件を満たしていれば事前同意なしに広告・宣伝メールを送信することが可能であり、本改正は現行の規制を強化するものである。

 金融機関・プロバイダー等に対する報告徴収とは、迷惑メール送信事業者がその事業実施上取引関係を持つと考えられる金融機関やプロバイダー等に対して情報提供要請を行うことを可能とする。

 迷惑メール事業者といえども、迷惑メールの送信に際してはプロバイダー等の通信系事業者によるサービスを受ける必要があるし、事業実施に伴う収益を得るためには金融機関に口座を持たざるを得ないのが一般的だ。このような事業実施上、不可欠と考えられる事業者に協力を仰ぐことにより、これまで不十分であると考えられていた法律の実効性についてその強化を行うというのが、本項目の趣旨である。

 加えて、罰則の強化としては、罰金上限額の引き上げが提示されている。従来、特電法において100万円であった罰金が3000万円にまで引き上げることが提示されている


 これらの法改正が行われることにより、迷惑メール事業者にとっては次のような事業環境変化が生じることになる。すなわち、オプトアウトへの移行により「事業形態の違法性が明確」になり、報告徴収が可能になることにより「摘発される可能性が高まり」、罰金が引き上げられることにより「コストパフォーマンス(リスクパフォーマンス)が見合わなくなる」こととなるのである。

 その他、海外からの迷惑メールについての対応策も言及されているが、これらについての有効性は海外行政当局の注力にもよるところであり、実効性はまだ不明瞭である。しかし、少なくとも国内迷惑メール事業者に対しては相当な「事業環境悪化」を強いるものであるといえるだろう。


“迷惑メール事業者”はどこに活路を見出すか

 そもそも、なぜ迷惑メール事業者はその送信事業に着手したのか、そして、なぜ迷惑メールは社会問題となり新しい法を用いてまで規制するべき対象となったのか。これら2つの問いへの回答はいずれもその「大量性」に帰結するだろう。

 迷惑メール1通あたりの原価はタダに近ため何十万人に1人でもうっかり引っかかってくれれば、十分採算が取れる。そのため、迷惑メール事業者は繰り返し大量の人に迷惑メールを送り続ける。そして被害者側にしてみてもこの大量性こそが、迷惑の源泉となっている。

 1人あたり月に1通届くだけならば削除の手間も大きなものではないし、ネットワークやストレージにかかる負荷も些少なものだといえるだろう。しかし、1人あたり日に数十通もの迷惑メールを受信する状況ともなれば、それは削除の手間にせよ、機器への影響にせよ看過できないものとなる。

 迷惑メール事業者はこのように大量の人に迷惑メールを送ることによりその収益を拡大しようとしてきたが、その背景としての収益構造は大まかには次のようになっている。

 収益=(1)送付メール総数×(2)有効率×(3)有効時の単価


 (1)は送付したメールの数、(2)はそのメールの内容に受信者が反応した率(出会い系サイトへのリンクであれば、そのリンクをクリックした率が相当する)、(3)は受信者が有効反応を示した際に事業者が得られる収益(前項の例であれば、出会い系サイト運営者より得られる紹介料)を意味する。

 これまでの彼らの“ビジネスモデル”は主として「(1)送付メール数」を増大させることに力点が置かれてきたと考えられる。しかし、法規制が強化される中で単純に送付メール数を増大させることは、摘発機会の増大などリスク増大につながるだけである。

 では、どのような次の一手が考えられるか。いずれにせよ、収益を増大させるためには、(1)~(3)のいずれかの項目を増大させる必要がある。

……

------------------------------------------------
■実に、犯罪社会学的っていうか、アンダーグラウンド経済学的っていうか、興味ぶかい。■暴力団対策法とか、風俗営業法とか、産廃処理行政とか、脱法・違法行為領域で「シノギ」をくりかえしている業界が厳然とある。「あってはならないこと」とか、聖人君子ぶったって、社会の相当部分が、「必要悪」として、かれら/かのじょらに たかって、ビジネスをすすめ、日常生活をおくり、あるいは欲望をみたしている。■おなじことが、「迷惑メール業界」にもあてはまるのは、当然だ。
迷惑メール送信事業を実施すること自体に意義を見出している迷惑メール事業者はほとんどいないだろう。車を盗むよりも、オレオレ詐欺をするよりも、コストパフォーマンス(あるいは「リスクパフォーマンス」ともいえるかもしれない)が高いと考えたからこそ迷惑メールを送信しているはず」という、きまじめな分析を、いじわるな皮肉とうけとめるのは、読者の品性の問題。世間で「必要悪」とされて存続している業界のほとんどすべては、ある集団・社会にとって「必要」とされるがゆえに くりかえされているのであって、趣味・主義・理想…なんかではない。階級・階層分布と景気動向・技術水準の推移などがからんだ、微視的経済学原理が「業界」をうみだし、存続させ、おわらせる。たとえば、旧ブログでとりあげた「産廃ビジネスの経営学」とかね。

■ちなみに、筆者は、「(1)送付メール総数」をふやす戦術として「ブログに対するコメントスパム、トラックバックスパム、広告・宣伝だけを目的としたブログ(スパムブログ)、SNS内のショートメッセージを活用したスパム、足跡スパムなど…IP電話スパム(SPIT:SPam over Internet Telephony)などの方法へとリソースが転じていくケース」、「(2)有効率」をあげる戦術として、「無作為に送付をするのではなく選択的に迷惑メールを送付すること」を指摘しているが、「(3)有効時の単価」は、分析が少々たちいっているので、これも一部転載。

例えば、これまで迷惑メール事業者が行ってきたように「迷惑メール内に出会い系サイトへのリンクを記載する」ということだけではプロフィットがリスクに見合わなくなる可能性がでてくる。そうなった場合、多少のコストを投じてでも1回あたりの収益を増加させようという方向に転ずる可能性が考えられる。

 例えば、金融機関であるかのような偽サイトを構築することによりパスワード等を詐取しようとする違法行為としてフィッシングサイトと呼ばれるものが存在する。このようなフィッシングサイト構築に対して注力することなども収益向上方策の一例として考えられるだろう。

 現在、国内におけるフィッシングサイトの事例がそれほど増加していない理由はひとえに、フィッシングサイト構築事業よりも低いコスト(あるいはリスク)によって、より高い利潤を得ることが可能な事業が存在するためである。既存の迷惑メール事業者についても、出会い系サイトへのリンクのような低い単価での活動ではなく、フィッシングサイト構築によるアカウントIDとパスワードの詐取や、手数はかかっても機微度の高いプライバシ情報を詐取するような高単価での活動にリソースを転換せざるを得なくなることも考えられる。

 加えて、フィッシングに手を染める事業者が増加すれば、フィッシングサイト構築を支援するようなツール群がアンダーグラウンドに普及し、一気にフィッシングサイト問題が拡大することも予想されるのである。

--------------------------------------------------
■なるほど、これは戦術というより、戦略転換だね。

■でもって、筆者の結論もかかげておこう。


 これらのケース以外にも、当局の取締り等に有効性(彼らにとっての「危険性」)が無いと判断した場合には、これまでどおり迷惑メール事業を継続していくケースも想定されるだろう。

 もちろん、本稿の目的は行政による規制強化を否定するものではない。日々、迷惑メールの影響によって生産性の低下や、望まないIT投資が発生している現状を鑑みれば、このような規制強化は不可欠である。

 しかしながら、「誰か」が迷惑メールの送信によって糧を得ている以上、もしその事業が規制強化によって続行不能と成った場合には、新たな食い扶持を求めて人材のリソースシフトが生ずることもまた不可避であると考えられる。

 本稿ではそのようなリソースシフトについて想定されるいくつかのケースを検討した。事業者、行政、個人においては、リソースシフトに伴う問題事象のトレンド変化が生じうることに留意し、自分あるいは自社が「次のカモ」として目を付けられないようにする必要があるのではないだろうか。
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表現規制つながりで

「有害サイト規正法は何を規制しているのか」(『論座』2008年9月号220~5ページ)という記事を紹介します。

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