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ハラナ・タカマサ

Author:ハラナ・タカマサ
     【原名高正】
誕生日:ニーチェ/フーコーと同日
職業 :サービス労働+情報生産

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生活保守主義としての「食の安全」意識とナショナリズム68=宮崎口蹄疫騒動を検証する(第15回) 感染はどこから?

生活保守主義としての「食の安全」意識とナショナリズム”シリーズの続報。

■前便で予告したとおり、“世界の環境ホットニュース[GEN]”の最近のシリーズ、“宮崎口蹄疫騒動を検証する”の記事の最新号を転載。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
世界の環境ホットニュース[GEN] 768号 10年8月6日
……

         宮崎口蹄疫騒動を検証する(第15回)

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 宮崎口蹄疫騒動を検証する         原田 和明

第15回 感染はどこから?

 7月23日に農林水産省の疫学調査チームが 感染時期や感染経路に関する見解を「中間概要」として発表しました。しかし、推定された感染源、感染時期、感染ルートは夫々がいかにも場当たり的で整合性がなく、とても説得力があるとは思えません。

 疫学 調査チームの「中間概要」を見てみます。朝日新聞(2010年7月23日21時22分)より以下引用。


 口蹄疫、3月中旬には最初の感染 発見時は十数戸と推定

 宮崎県での家畜伝染病、口蹄疫(こうていえき)の問題で、感染拡大の原因や感染経路などを調べている農林水産省の疫学調査チームは23日、調査結果の「中間概要」をまとめた。(1) 最初の感染とみられるのは3月中旬 (2)感染疑いが初めて確認された4月20日には 周辺の十数戸の農場に感染が広がっていた──と推定。感染経路をめぐっては、韓国・香港などからの人や物の移動が考えられるとしたが、特定はできなかった。今後さらに追加の調査も検討する。

 調査チームは 家畜の専門家らで構成。発生した全292例について、家畜から採取した検体の抗体検査や現地での聞き取り調査などから、感染の時期や経路を推定した。

 チーム長の津田知幸・動物衛生研究所企画管理部長によると、最初の感染とみられるのは宮崎県 都農(つの)町の水牛農家。3月26日に症状がみられ、31日に採取された検体からウイルスが検出されており、潜伏期間や感染後に増える抗体の量などから最初に感染した時期は3月中旬と推定した。

 都農町の肉牛で 最初の感染疑いが確認された4月20日には、すでに同町や川南町の十数戸の農場で感染した家畜がいたと推定。感染拡大の主因となった豚についても、同日までに県畜産試験場を含む数カ所で感染していたとした。

 (引用終わり)

 予想していた ことではありますが、今回の口蹄疫が 宮崎県限定だったのはなぜ? という素朴な疑問に「中間 概要」はまったく答えていません。東国原知事は7月10日の「そのまんま日記」の中で「『宮崎県から 出ていないのは奇跡である』と多くの専門家の方々も仰っておられる。」と述べていますが、疫学調査チームには、是非、その疑問に最終報告で答えてもらいたいものです。

「(1) 最初の感染とみられるのは 3月中旬 (2) 感染疑いが初めて確認された4月20日には周辺の十数戸の農場に感染が広がっていた──」としたら、その間の一か月間に相当数の家畜が宮崎県から全国各地へ出荷されていたはずです。宮崎限定だったという事実を最終報告ではどのように説明するつもりなのでしょうか?

 さらに、「感染経路をめぐっては、韓国・香港などからの人や物の移動が考えられる」というに至っては、何の思惑があるのか? と疑いたくなります。

 宮崎への感染経路が「韓国・香港などからの人や物の移動」などと言われたら、それこそ、「韓国・香港から宮崎県にしか入ってこなかったのは奇跡である」という結論にするつもりなのでしょうか?

 農水省はまともな疫学調査をしていないのですから、感染経路などわかりっこないだろうと思っていましたし、第一、今回の流行が宮崎限定だったという不自然な結果を疫学的に説明できるとは思えませんでした。今までひた隠しにしている抗体検査の結果(第10回、GEN763)を公表したところで、疫学調査と呼べるようなものではないのですから、感染経路など追跡できるものではありません。今まで家畜は口蹄疫に罹ったり治ったりを繰り返していたことが明らかになるだけでしょう。

 ところで、疫学調査チームが、宮崎県都農町の水牛農家を感染第一号とした経緯をたどってみると、不可解なことがいくつも出てきました。

 疫学調査チームが「最初の感染とみられるのは3月中旬」と結論付けた根拠は、今回の騒動で ウイルスが検出された検体のうち、採取日が最も古い事例が3月31日に宮崎県 都農(つの)町の水牛農家(発見順では6例目)で採取された検体だったからです。口蹄疫の潜伏期間を2週間とすると、さかのぼって「3月中旬に感染」となり、3月26日に症状が みられたことも、その推定と矛盾しません。

 ただ、この 6例目の水牛農家、私が 農水省のホームページから 疑似患畜情報(プレスリリース)をひとつづつ読んでいたときから、口蹄疫ウイルス発見の経緯がヘンだなあと気になって いました。4月23日付農水省のプレスリリースから以下引用。

 6例目
(1) 4月22日(木曜日)14時、1例目の農場と 利用している飼料会社が共通
 である疫学関連農場として、宮崎県が当該農場の立入調査を実施しました。

(2) 立入検査時においては口蹄疫を疑う臨床症状は 認められませんでした
 が、農場主からの過去の臨床症状の聞き取りや、疫学関連農場であることを
 踏まえて採材を行い、また、別の検査で 3月31日に採取、保存していた検体
 と合わせて、(独)農研機構動物衛生研究所に持ち込みました。

(3) 本日夕刻、PCR検査の結果、3月31日採取の1頭で陽性を確認し、口蹄疫
 の疑似患畜と判断しました。
(引用終わり)

 口蹄疫を疑う臨床症状は 認められないにも関わらず、県(家畜健衛生所=「家保」と略す)が立入検査を行なったのは、疫学調査のためですから、それ自体はヘンではありません。疫学調査は感染源を特定するために、発生地から近いとか、資材の購入先が同じなどの共通点を抽出して検査ポイントを選定しますから、この水牛農家が選ばれたのもヘンではありません。

 私がヘンだと思ったのは、疫学調査と称してはいるものの、この水牛農家しか調査対象になっていない点です。同じ飼料会社から飼料を購入している畜産農家はたくさんあるだろうに、それらの農家に立入検査したとの報告例が他にないのです。同じ飼料会社と取引のある畜産農家の多数から検体を集めてきて、その中で大多数の畜産農家から抗体が検出されれば、飼料が汚染源である可能性が高まります。その大前提である検体収集を他の畜産農家から行なった形跡がないのですから、この水牛農家だけに立入調査したホントの理由が別にあったのではないかと思われます。

 それに、この水牛農家は1例目の農家から600メートルしか離れていません。これでは、抗体検査「陽性」でも、飼料が感染源なのか人の往来が原因かは特定できません。疫学調査のサンプルとしては「周辺農家」として分類した方がよさそうな印象を受けます。

 その疑問に、この水牛農家の担当獣医である池亀康夫氏が答えています。(高山文彦「宮崎口蹄疫禍現地ルポ」文藝春秋2010年8月号より以下引用。)

 近くの農場で口蹄疫が発生したというので、家畜保健衛生所から獣医が聞き
 取り調査に来たのは発表翌日の(4月)21日である。ということは、おそらく
 家畜保健衛生所はまだ検体を東京に送っていなかったということではないか。
 そして彼らはあくる日にまた来て、五頭ばかりの水牛から新しく検体(血液)
 を採って東京の研究所に送っている。
(引用終わり)

 家保が水牛農家に聞き取り調査に訪れたのは「飼料会社が共通」だからではなく、「近くの農場で口蹄疫が発生した」からと牧場主に説明したというのです。これなら少しも不自然ではありません。しかし、近くに家畜農家が密集している地域で、「近くの農場での発生」を理由にこの水牛農家だけが立入検査を受けることは不自然です。

 つまり、家保は最初からこの水牛農家を狙っていたと考えられます。その不自然さをごまかすために、二枚舌を使ったと推測されます。ところが、家保の二枚舌はこれだけではありません。

 この水牛農家では、3月末に 水牛の異変が 発生しており、「そのまんま日記」(7月25日「初発 6例目」)にそのときの状況が示されています。(以下引用)

 6例目についてのこれまでの経緯・・・・・・・

 3月26日→2頭に発熱・乳量低下で開業獣医師が診察。このとき、開業獣医師
 に口蹄疫の可能性の認識は無かった。

 3月29日→9頭、30日には10頭に拡大した模様。

 3月31日→開業獣医師から通報があり、家畜防疫員(県の獣医師)3名が立ち
 入り検査。経営者や開業獣医師から話を聞いた上で診察。経営者や獣医師か
 らは、発熱・乳量低下・食欲不振・一部に下痢の症状等の情報があったこと
 から、家畜防疫員は、消化器病を疑い、血清・糞便・鼻腔スワブ等を採材。
 口蹄疫を疑う症状は無い。

 4月2日→下痢を主徴とする4種類の検査結果は いずれも陰性であったことを
 開業獣医師に回答。

 4月5日→開業獣医師から、県の家畜保健衛生所(家保)に「殆どの牛が解熱
 したが食欲が回復しない」「乳房等に疵皮が形成されており、変えたばかり
 のノコクズによるアレルギーを疑っている」という情報提供がある。この時、
 「解熱した」ということからも口蹄疫は疑わなかった。

 4月14日→血液採取のために、家保が再度 立ち入り(経営者・獣医師・従業
 員立会)。新しいノコクズに交換した後症状を示した(シロアリ駆除剤が入
 っていた)。別のノコクズに 変えたら熱は3日程度で下がった。子牛には泡
 状の流涎あり。

 4月21日→1例目の疫学関連農場として 立ち入り検査。この時、3月31日の聞
 き取り内容と一部異なる内容(下記の話)があったことから、緊急に畜産課
 と対応を協議し、翌日に採材することに決定。

 この時の経営者の話・・・「(そう言えば)3月末に、1頭調子が悪くなり、
 一気に全頭に広がった。現在は回復した。その時、涎・口内炎・足に異常・
 餌を食べず乳が絞れない・乳房の皮膚に一部剥離があった」
(引用終わり)

 東国原知事の日記は、宮崎県の対策会議の席上で行われた家保からの報告をもとに記していると考えられます。3月31日の水牛の様子に比べ、4月21日の「この時の経営者の話」はいかにも口蹄疫をイメージさせるものに変わっているような感じがします。池亀獣医も、3月31日に家保から来た3人の獣医も、このとき口蹄疫はまったく疑わなかったと証言しています。(高山文彦「宮崎口蹄疫禍現地ルポ」文藝春秋2010年8月号より以下引用。)

 3月29日、別の9頭の乳が出なくなったと連絡があった。その9頭は熱が 40度
 あるのもいれば、41.6度と高熱のもいた。抗生物質と解熱剤を注射し、あく
 る日行ってみると、どれも熱は下がり始めていた。

 31日の午前10時半に家畜保健衛生所(家保)から獣医三人に来てもらった。
 搾乳牛二十頭と種牛一頭を追い込み柵に入れて全頭から採血しようとしたが、
 水牛たちは嫌がって暴れ、三頭からしか採れなかった。

 4月1日から3日にかけて搾乳牛20頭と種牛の状態をみていったが、既に1日の 
 段階でほとんどが平熱に戻り、そろってエサを食べ始めた。ただし、毛の抜
 けた牛がいた。肝心の乳がまだ出ない。
(引用終わり)

 池亀獣医は、牛が暴れるので、足の異常は確認できなかったし、暴れれば涎が出るのは普通だとも言っています。彼は発症の拡がり具合(一気に広がった)から感染(徐々に広がる)ではなく、中毒を疑っていました。「そのまんま日記」にも、ノコクズを交換したら熱が下がったとの記述があり、池亀獣医の見立てを支持しているように見えます。なお、高山氏は水牛農家にも直接取材する予定でしたが、「感染第一号」とされたことでマスコミの取材攻撃を受けていて、会えなかったとのことです。(高山文彦「宮崎口蹄疫禍現地ルポ」文藝
春秋2010年8月号)


 家保の疑惑は もうひとつあります。「そのまんま日記」では、3月末の検査結果を4月2日に開業獣医師に回答したことになっています。ところが、当の獣医は「保健衛生所からは診断結果がこないため、4月5日に電話で問い合わせた所、問題症状は 特にない『陰性』と言われた。」と証言しています。(高山 文彦「宮崎口蹄疫禍現地ルポ」文藝春秋2010年8月号)

 どちらかの勘違いという可能性もないわけではありませんが、池亀証言のように、家保が診断結果を送っていなかったとしたら、家保の内部で何かが起きていたのかもしれません。のちにPCR「陽性」とされた問題の検体(3月31日分のスワブ)は、このとき、家保にあるのです。立ち会った 3人の獣医がそろって口蹄疫の可能性を否定する中で、どんな口実で検体を動物衛生研究所(東京)に送ろうかと画策していたのでしょうか。

 家保からの診断結果が来ないという事態はもう一度起きています。結局、水牛の異変の原因がはっきりしなかったため、水牛農家と獣医が相談して 4月14日に再度、家保に検査を依頼していますが、このときも回答がないまま、池亀獣医はイライラしていた中で 4月20日の口蹄疫発生のニュースを聞いています。電話で問い合わせたところ、騒然と なっている様子が うかがえ、このときも「陰性」との返事でした。(高山文彦「宮崎口蹄疫禍現地ルポ」文藝春秋2010年8月号)

 検査結果が 2度も不達と なっていた間の4月9日、家保に「口の中に 軽い潰瘍(かいよう)のある牛がいる」と別の獣医(青木淳一)から連絡が入っています。この畜産農家で別の2頭が16日に発症したことが 最初の確認例となるわけですが、感染症の鑑定自体は 4月17日に検体採取、19日に「陰性」通知ですから(朝日新聞2010年5月19日 7時5分)、14日に検体採取した水牛農家への連絡の遅れは不自然です。

 すると、1例目の発見の経緯も 不自然に見えてきます。水牛農家の鑑定(宮崎でできる)は放置して、1例目の農家は 根拠もないのに「念のために」口蹄疫検査のために検体を東京へ送ったのですから。(以下引用)

 「ただ 衛生所(※家保)は 19日、念のために 検体を 国の動物衛生研究所(※動衛研)海外病研究施設(東京都小平市)に送った。このとき初めて、県は国と連絡を取った。20日早朝、口蹄疫の陽性反応が出た。」(朝日新聞2010年5月19日 7時5分)

 その直後に、水牛農家へは色々と理由を作って乗り込み、血液の検体送付を口実に3月31日のスワブを東京の動衛研へ送ることに成功した というわけです。家保の一連の行動はまさに「胡散臭い」の一言に尽きます。

 そして、「動衛研によると、口蹄疫の検査依頼は年間わずか1、2件。」(宮崎日日新聞8月1日)ということですから、検査装置もほとんど休眠状態だし、検査員も操作に習熟する機会がなさそうです。地元の獣医は誰も口蹄疫を疑わなかったという状況で、臨床検査と異なる結果が出たわけですが、動衛研はよく再検査もせずに即公表したものだなあと驚きます。

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【かきかけ】
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タグ : ハイパー独裁1984年真理省安全

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コメント

本文記事が完成するまえに、続報到着(笑)

宮崎口蹄疫騒動を検証する   原田 和明
第16回 農水省疫学調査チームに不信感
http://www.melma.com/backnumber_90715_4937219/

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