最低賃金/「逆転現象」解消しなくては 一生懸命に働いて得る収入よりも、生活保護費の方が高い。おかしな話なのに、この逆転現象が解消されない。
都道府県別の最低賃金の決め方が低すぎるからだ。青森、秋田、宮城など12都道府県で生活保護を下回っている。改善どころか、前年より2県増えた。
おととしの最低賃金法の改正で、生活保護とのバランスに配慮するよう明記された。それでも変わらないのは、業績が回復しない中での引き上げに企業側が強い不安を持っているからだとされる。
大事なのは、逆転現象によって勤労意欲が著しく傷つけられていることだ。自分の仕事は、その程度にしか評価されないのか。自立して生計を立てていく誇りまでもが損ねられる。
企業経営にももちろん誇りがあるはずだ。「自分の会社の従業員にそんな思いはさせない」。その種の精神論にはもう期待できないというのであれば、法的な強制力の強化を検討すべき時にきている。
昨年秋に地域別最低賃金の改定を実施した際、生活保護の給付水準を下回っていたのは10都道府県だった。厚生労働省が今月、中央最低賃金審議会の小委員会に提出した調査結果によると、秋田、千葉両県でも逆転したことが分かった。
昨年の改定後の全国平均は時給713円。最高は東京の791円で最低は沖縄など4県の629円。生活保護との逆転を解消するためには、最も逆転差額の大きい神奈川で時給を47円引き上げなければならない。
東北の6県はいずれも600円台だ。生活保護と逆転している3県は、宮城(662円)で14円、青森(633円)で6円、秋田(632円)で5円の引き上げが必要だ。
「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」。憲法25条が掲げる生存権の理念に基づいて運用されるのが生活保護制度だ。その水準を下回って、「最低限」の生活さえ脅かす労働対価が放置されていいはずがない。
議論の流れは逆転現象の解消に向かってはいる。おととしの法改正で、地域別の最低賃金を決める際に生活保護との整合性を考慮するよう求める規定が設けられた。
政府は6月、労使の代表が加わった雇用戦略対話を経て、最も低い地域の最低賃金を800円に、全国平均を千円に引き上げる方針を打ち出している。
実現時期の目標は、800円が「できる限り早期に」、千円は「2020年までに」となっている。生活保護との逆転解消は「早急に」と位置付けられなければならない。
人件費の負担増による経営圧迫を、中小企業が心配していることが壁になっている。国の経費支援に限界はあるにしても、生活保護との落差分は埋める必要がある。
最低賃金の引き上げが雇用環境や消費全体にどんな効果を及ぼすかは、見方が分かれている。しかし、「最低限」の暮らしを脅かす制度が容認されていいとはどうしても思えない。
2010年08月01日日曜日---------------------------------------------
■正論だとおもうけど、しはらえない中小企業があるという現実。つまりは、生活保護未満の賃金でもはたらくという層が、少数といえどもいるということ、「いない」ような業界は、外国人研修生とか日系ブラジル人みたいな層をリクルートすることで、搾取してはじめて採算をあわせてしまうだけど。■まあ、はっきりいって、「
水際作戦」がなくなって、ひとびとも、生活保護を権利とみなして、はずかしがるようなことがなくなれば、最低賃金みたいな、アホな給与水準ではたらく人間はいなくなる。それこそ、移民労働者以外はね。いや、外国籍だって、人権保障として、生活保護的な処遇をうけるなら、そんな バカにした賃金水準ではたくことなんぞなくなるだろう。つまり、そういった業種は、存続不能になるということだ。
■問題は、こういった経済的な構造を、おそらく、社説をかいている論説委員たちが、認識していないらしい点。
●日記内
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双方とも実際にちゃんと生活できるかがチェックポイントだと思います。
勤労者がふだんつきあいもない生活保護よりも何円月収が高い・安いを気にしているとはかぎりませんし、
もしも両方ともまともに生活できない水準のまま正しい秩序だけを整えられたりしたら、どちらも問題解決にはなりません。
いくつか補足
●「一生懸命に働いて得る収入よりも、生活保護費の方が高い。おかしな話なのに、この逆転現象が解消されない」
↑■これって、ここだけとりだすと、ものすごい差別意識というか、「生活保護費は、たかすぎる」論に援用されそうな論理でさえあります。■しかも、後半で、「「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」。憲法25条が掲げる生存権の理念に基づいて運用されるのが生活保護制度だ。その水準を下回って、「最低限」の生活さえ脅かす労働対価が放置されていいはずがない」などと、うすっぺらい正義感をふりまわし、人権に配慮しているポーズをとっています。■問題は、こういった賃金でしか募集できない業界がいきのこっている点と、それでも応じるほかない層が実在する点であることは、本文でのべたとおりです。
■つまり、論説委員氏らの議論を論理的につきつめれば、「生活保護水準をしたまわるような企業は、労働市場が健全にはたらくことで、ツブれるしかない」となるか、「以前の農政におけるコメのかいとりのように(現在の、葉タバコのように)、必要な業界は政府=納税者・企業が、犠牲をはらってでも保護する」となるかしか、ないんだとおもいます。
■結局、生活する市民の日常水準を社会がちゃんと維持する責任感があるかどうか? 「自己責任だから、破綻名もやむなし」という、無責任をきめこむかどうか? につきますね。
■その意味で、社説執筆者はともかく、「中央最低賃金審議会」は、なにを目的に議論をくりかえしているのか、実に不可解です。■セイフティーネットをはらないかぎり、「はらえないものは はらえない」「せにはらは かえられないから、それでも はたらく」という労働市場の原理が作動して、とまらないとおもいます。
■ところで、「勤労者がふだんつきあいもない生活保護よりも何円月収が高い・安いを気にしているとはかぎりません」という、ワタリさんの指摘は重要で、論説委員が、こういった もってまわった「正論」に終始しているのは、ワーキングプア層および、それにちかい層の不満を「予想」してのことだとおもいます。■実際、ネット右翼のような微妙な層はともかく、実際のワーキングプア層は、「ねたみ」意識をもって、やつあたりしているような「ユトリ」などないと推測されます。■その意味で、かってな「予想」によって、「世論」に「配慮」をみせる新聞記者たちというのは、「中央最低賃金審議会」の おエラいさんたちと通底したエリート的視座≒みおろした視点を否定できないと。■この社説の偽善性というか、欺瞞性は、そこにあるとおもいます。
■しらべていませんが、「産経」あたりの右派媒体は、このあたりは、回避するんじゃないでしょうか? だって、「現状の最低賃金水準は、とてもはらえない」といった零細企業の実態をささえているのは、外国人労働者などなわけで、それは、かれらが「大嫌い(ということになっている)」な「異物」です。■つまり、文化的・社会的保守主義(というか、反動的排外主義)にそって外国人労働力を排除すれば、零細企業から ドンドンつぶれ、それは、トヨタをはじめとする日本の基幹産業のコスト削減策を窮地においつめる(まあ、連合がきらいな、産経グループとしては、一部OKなのかも)し、両方の整合性をとるためには、生産拠点をドンドン国外に移転させる必要があって、ますます国内需要はへっていく(というか、超大手の多国籍企業の本社だけがもうかる)…という、悪夢の展開になるほかない。■かれらが、派遣労働などの自由化をかたりながら、肝心の巨視的経済動向には、めをそむけるのは、こういった構図があるからではないでしょうか?
■もちろん、そこには、ワーキングプア層などの、生活する市民への配慮など、はじめからない。
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