オランダ戦を「惜敗」と報じる日本のメディアの愚かさと無責任2010年06月24日10時00分 / 提供:ゲンダイネット
20日の新聞各紙には、一斉に「日本惜敗」の文字が躍った。
W杯1次リーグ、19日のオランダ戦で日本は0―1で敗れた。1点差で「惜しかった」というのだ。「オランダと互角」と報じたところもある。
オランダには昨年9月、アウェイで0―3で負けている。それと比べたら進化しているとか、世界ランク4位の優勝候補を相手に善戦したとか書いているが、この勝負は勝たなければ意味がない。負け試合なのに批判せず、褒めるメディアの“サポーター体質”が日本のサッカーを甘やかしているとしか思えない。スポーツライターの工藤健策氏はこう言う。
「オランダ戦は、とても互角と言えるような試合内容ではありません。『惜敗』ではなく『完敗』です。パス回しからして、実力差は歴然。オランダが正確なパス1本でラクラク通す距離を、日本は2回パスをつなげなければ進めない。その結果、後半はスタミナ切れです。一方のオランダチームは、ハナから『勝ち点3』狙いで、格下相手のシフトを敷いていた。1得点で構わないという余裕の姿勢でした」
新聞もテレビも「シュート数では相手を上回った」と報じていたが、この褒め方もむなしくなる。オランダ代表のシュート数は計9本、そのうち5本が枠をとらえていた。日本はシュート10本を放ったものの、枠をとらえていたのはたったの3本。苦し紛れのシュートが目立った。ボール支配率もオランダが61%で圧倒。1失点で済んだのは、日本がディフェンスに徹したからだ。つまり、防戦一方だったのに、「よくやった」と拍手喝采。負けてこんなに喜んでいるのは日本のメディアだけだろう。
日本代表の前監督、オシム氏は「日本はチャンスがあればモノにするという殺し屋の本能が不足している」と指摘。「ピッチの上にソファを出し、葉巻をくゆらせるような選手になって欲しくない」と酷評した。これが、正論なのである。
それなのに、日本のメディアが大甘なのは、サポーター感覚から抜け出せず、「一緒に盛り上げて儲けよう」としか考えていないからだ。
直前の国際Aマッチの4連敗を見れば、岡田ジャパンの実力は分かる。カメルーンは内輪モメで自滅したのに、あの1勝でお祭り騒ぎ。オランダには実力通り負けても、「惜敗報道」になるのである。
「負けても戦術ミスを批判することもなく、『がんばれニッポン』という論調ばかり。大マスコミの大本営発表的な報道姿勢がレベル低下を招いている。テレビの実況中継もヒドイ。どう見ても劣勢なのに、解説者は『いいですね』『日本のペースです』なんて言っていたりする。視聴率さえ取れればいいという商業主義に侵され過ぎです。こんなデタラメ報道を続けていたら、いつまでたっても日本サッカーは強くなりませんよ」(工藤健策氏=前出)
24日のデンマーク戦を中継する日本テレビは、深夜でも高視聴率が見込めると大喜び。他のメディアもこぞって「勝てる」「いける」と無責任にあおっている。根拠もないのに期待値を膨らませるのはやめた方がいい。
(日刊ゲンダイ2010年6月21日掲載)---------------------------------------------
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コメント欄に、この はずかしい記事の問題点は、だいたいかきこまれているので、そのあたりは、ツッコミをさける。■サッカー・ファンでもない、にわかナショナリストたちが、日本代表がひのき舞台でたたかうという機会だけで もりあがろうとする。それを商売ネタにしようとする。大衆とメディアの 軽薄な態度の反映こそ、この記事といえるだろう。日本代表の実力がどうだったとかではなくて、そこへの関心のもたれかたとか、報道合戦の水準とか、それをささえる動機が、はずかしいんだが、そんな自覚は、カケラもみあたらない。■それは、コメント欄で エラそうに、こういった報道合戦を こバカにしているサッカーファンたちもだ。自分たちのサッカーを見る目がどんなに、こえていようと、現代日本でのサッカー受容(するスポーツとしての少年・少女たちのことは、おくとして)の水準のひくさを問題視せずに、メディアの水準のひくさをたたいで、どうなるんだ?■
ナショナリズムによらないサッカー熱が実在するとして、現状のサッカー報道市場の水準のひくさは、めをおおわんばかりだろうことが、サッカーにうとい、ハラナのような人間にもバレバレというのは、ナショナリストとして、はずかしくないんだろうか? いや、かれらはナショナリストを完全に卒業した「真のファン」なのかもしれないが、だったら、低レベルメディアなど放置しておけばよいのに。いや、そんな くさすヒマがかりにあるなら、低レベルな にわかサポーターを 効率よく啓発する文章をたくさんかいて、サッカー報道市場が好循環にのるように、画策すべきだろうに。
■それにしても、
工藤健策氏とやらは、ハイリスクな態度をとったもんだ。
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