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前回(目次+おびコピーの分析だけした)のつづき。
■本書の特徴的な点は3つ。■①最近のテキスト類には、すくなくないものの、よこがき/「デスマス」調/脚注、という、およそ伝統的なスタイルをなぞらないかたちをとっている。■②訓よみを極力さけ、本文/脚注/参考文献の固有名詞中心に、表音主義の ふりがなが そえられている。■③テキストとしての前作にあたる『
あたらしい自画像』同様、節の冒頭に、架空の登場人物(わかもの)ふたりによる、かけあい(ボケ・ツッコミ ほどの はっきりとしたものではない)が配され、節の末尾は、【結論●】といったシメが おかれている。
■『
あたらしい自画像』ほど くだけた感じはないが、極力やわらかな印象をねらったことは、「デスマス」調だけでなく、ところどころに 意識的に おちゃらけた記述がまぎれこまれせてある点でわかる。■たとえば、つぎのような箇所(p.97)。
アイ:横綱審議会って、なんで「相撲は国技」って、こだわるのかな?
リカ:「土俵上は日本民族の精神的伝統」とかいって、「国際ルール」なんかをもちこませないって、宣言したいんでしょ? モンゴル人力士が東西の正横綱をはるようなご時世で、くもゆきがあやしいから(笑)。
アイ:たとえば、土俵上では行司さんのいうとおりにしないと、とか?
リカ:「オンナは不浄だから、土俵にあげない」なんてのも、「国技」の伝統らしいよ。
アイ:「国技」とか「相撲道」とかいうわりには、スキャンダルや不祥事がたえないよね。
リカ:不祥事をうやむやにする風土っていうのも、「国技」の文化的伝統なんじゃない?(笑)
アイ:関脇どまりでプロレスラーに転向したけど、朝鮮半島出身の力道山とか、おとうさんがウクライナ人の大横綱大鵬とか、「純粋なニホンジン」とよばれないだろう有名なお相撲さんがちらほらめだつよね。
リカ:「純粋なニホンジン」って、いきがったって、大相撲のルールにそっている白鵬や朝青龍になげとばされているのでは、全然「国技」のリーダーになれないしね。■本文には、さすがに こういった ヒトをくったような箇所はないが、筆者の性格がしのばれる(笑)。
■テキスト用(?)とおぼしき、『
たたかいの社会学』
*でみられたような、つきはなしたような つめたさ、いきぐるしいばかりの攻撃性は、かげをひそめている。しかし、クソまじめなフリをしつつ こっそり痛烈な皮肉をはなつなど、かなり意地わるい(笑)。■それは、ソボクに 「日本的なるもの」への愛をうたいあげる層への 一貫した挑発的な批判(デビュー作=1997年
**以来)の結実としてあるからだろう。
* 初版から3版まで、こまかな加筆修正がくわわり、昨年「増補新版」がでた。
** 『イデオロギーとしての「日本」』初版 続きを読む »
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